三澤医師による手術支援ロボット「ダヴィンチ」での膵臓手術の様子
三澤医師による手術支援ロボット「ダヴィンチ」での膵臓手術の様子(本人提供)

名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第34回。肝胆膵外科医として世界的に有名であり、特に単孔式脾臓手術のパイオニアとして、世界一の症例数を誇っている三澤健之医師(帝京大学医学部附属病院肝胆膵外科・教授)を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

腫瘍を不安ごと切除する
腹腔鏡下膵切除術の名手

 手術と聞くと、一般の人はメスによる切開と大量の出血シーンを思い浮かべるのではないだろうか。だが、それはちょっと前までの話。近年臓器の手術は、開腹手術に比べて体への負担が少なく、入院も短期間で済むことから、腹腔鏡下が主流になっている。腹部に小さな穴を4~5カ所開けて腹腔鏡や鉗子を挿入し、モニターで拡大観察しながら患部を切除するのである。

 しかし、三澤健之医師(帝京大学医学部附属病院肝胆膵外科)が得意としている膵臓は例外だ。膵臓は胃の裏側の深い位置にあり、豆腐のように脆いため、少しでも手元が狂えば臓器そのものを破壊してしまう。まして腹腔鏡下での手術は、開腹するより術野が狭くなり、より高い技術を要する。開腹手術でも膵臓の手術は難易度が高く、腹腔鏡手術が進歩した現在でも、腹腔鏡を用いた膵臓手術は限られた施設でしか行われていない。また、腹腔鏡下膵臓手術の対象となるのも、良性疾患、良悪性境界腫瘍とよばれる低悪性度の腫瘍、そして一部の膵がんだけだ。

 いったい、どれほど難しい手術なのか――。