――鉄道以外でも使えそうに思えます。

天満 売り上げの7~8割は鉄道関連ですが、4~5年前から建設関係にも進出しました。現在は、博物館、美術館、図書館などの公共施設や、ホテルなどの内外装にコーティングを施工しています。

 また、一般の住宅でも広がってきました。クロスや床に塗布すると花粉が付着しにくくなり、掃除がしやすくなるので、喜ばれています。

――いつからこの事業を?

天満 2008年です。それまではペット関連企業や光触媒技術関連企業などで働いていました。

 前職でガラスコーティング剤に出合ったのですが、既存の製品にはさまざまな課題がありました。そこでペットの仕事で得た薬品関係の知識を生かして、自分で添加剤をブレンドし、独自のコーティング剤を開発したのです。独立起業後、鉄道か建築、どちらかに集中的に営業しようと考え、鉄道会社に絞りました。

――その決断が功を奏しましたね。

天満 今となってみればそうなのですが、当時は事業継続に必死になりました。鉄道会社は、乗客の安全が第一なので製品性能に厳しく、採用されるまでに2~3年間かけた曝露実験などが必要です。

 実験に取り組んでいるうちに、資金が枯渇してきまして……。何とか製品が開発できたものの、そのときは生活費にも事欠く状態。材料を仕入れるお金がなく、困ってしまいました。

――どのように苦境を乗り切ったのでしょうか?

天満 そこを救ってくれたのが、いちい信用金庫さんです。自宅の近くに支店があったので、融資のお願いをしました。 社歴が浅いので、信用保証協会の承認は断られてしまったのですが、いちい信金さんが事業計画書を高く評価して、プロパーで貸してくださったのです。もしこの融資を受けられていなかったら、今の弊社はないでしょう。

――そんなサポートがあったのですね。

塗るだけで傷も菌もウイルスも防止 多機能のガラスコーティング剤を開発<br />建築物の床面への塗装。防汚、防滑などさまざまな効果がある
●グラストップ株式会社 事業内容/鉄道車両用・建材用ガラスコーティング剤および洗浄剤の開発・製造・卸・施工、管理、従業員数/7人、売上高/1億4800万円(2020年度)、所在地/愛知県名古屋市中川区西伏屋1-304、電話/052-618-8260、URL/glasstop-japan.com

天満 いちい信金さんには、その後も、中小企業向け創業・育成&成長ファンドの「しんきんの翼」を紹介してもらいました。おかげさまで、さらに資金調達ができました。感謝しかありません。

 事業が軌道に乗ってからは、さまざまな金融機関からお声がけいただいているのですが、現在まで、いちい信金さん以外にお世話になっていません。

――今後はどんな展開をお考えですか?

天満 コーティング剤の施工代理店を全国に広げていきたいと考えています。弊社はコーティング剤の開発・製造だけでなく、施工やメンテナンスも手がけています。施工は外部の代理店にお願いしているのですが、まだまだ数が足りません。建築関連のお客さまが全国で増えていますので、工務店や塗装業の方とは相性がよいのではないかと考えています。ゆくゆくは株式公開もしたいですね。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2021年5月号掲載、協力 いちい信用金庫