おもしろ雑学 世界地図のすごい読み方国内移動でも入国審査が必要なマレーシア・サラワク州の州都クチン Photo:PIXTA

地政学が一大ブームだが、そのベースとして必要なのは「世界地図を読む力」、すなわち各国の文化や歴史背景、政治経済や社会情勢に関する深い地理的知識に他ならない。本連載では、話題の新刊書『おもしろ雑学 世界地図のすごい読み方』からの抜粋で、日本人があまり知らない世界各地の意外な実情をわかりやすく紹介する。今回も、国内移動でパスポートが必要なエリア、領有を拒絶されている「無主地」、2年で地図上から消えてしまった国など、世界でも珍しいケースをご紹介。

マレーシアには国内移動であっても
入国審査が必要な州がある

 国内移動ならば、通常はパスポートは必要ない。そんなことは万国共通の常識だ。しかし、マレーシアのサバ州とサラワク州では、この常識が通用しない。

 たとえば、マレーシアの首都クアラルンプールの住民がサバ州やサラワク州へ行く場合、パスポートを提示して“入国審査”を受けなければならない。外国人だけでなくマレーシア国民であっても審査を受けなければならないので、“サバ国”や“サラワク国”を訪れるような錯覚を覚える。

 なぜ、このようになっているのか? それは、マレーシア政府がサバ州とサラワク州に大幅な自治権を認めているからだ。

 マレーシアは、マレー半島の約半分とボルネオ島の約半分を領土としている。かつてその地では、イギリスとポルトガル、オランダによる植民地獲得競争が繰り広げられ、マレー半島の南半分とボルネオ島の北半分がイギリスの植民地となった。