「算数が苦手な人」と「算数障害を抱えている人」の違いはどこにあるのだろうか。熊谷氏に、算数障害の特徴を挙げながら解説をしてもらった。

「算数障害には、数処理、数概念、計算、文章題という4つの下位分類があり、障害を抱えているか否かを見極めるためには、それぞれの特徴を見ていく必要があります」

 4つの下位分類の内、聞きなれないのが数処理と数概念だろう。

 まず、数処理に障害を抱えている人の特徴とはどういうものか。

「数処理に問題がある場合、文字記号である数字と音声記号である数詞をうまく結びつけられず、例えば、『数字の“さんびゃくごじゅうよん”を書いて』と指示をしても『30054』と書いてしまったり、『1001』を『ひゃくいち』と読んだりといった例が見受けられます」

 では数概念に障害を抱えている人の特徴とはどういうものか。

「数概念は順番を表す『序数性』が理解できないケースと、量に関わる『基数性』の理解に困難を示すケースに分けることができます。例えば、100ページの本を渡されて『53ページ目を開いて』と指示された場合、通常の人はまず全体の半分くらいに目星をつけて開くことが自然にできますが、『基数性』がわからない人は初めや終わりからページをめくっていき、番号を目でゆっくり追いながらでないと探り当てることができません。数の大まかな量が理解できないために、順番をたどっていくことに頼っているからです。また、序数性が理解できない場合には、18はだいたい20、289はだいたい300などと量的に大まかにはわかるのですが、279と297、11025と11250などはどっちらが先にでてくる数かの順番を間違ってしまうこともあります」