大人の自閉症大人になってから「生きづらさ」を感じているなら、自閉症スペクトラムの可能性も否定できません Photo:PIXTA

「大人のADHD(注意欠陥多動性障害)」が知られるようになって久しい。ADHDとは生まれつきの障害である発達障害の1つ。不注意(集中力がない)、多動性(落ち着きがない)、衝動性(考える前に実行してしまう)の3つを特徴とし、かつては「子どもの障害」と見られていた。しかし近年、これら3つの特徴から大人になっても「生きづらさ」を抱えている人が少なくないことが分かってきた。今回紹介する「大人の自閉症」も発達障害の1つで、正確には「自閉症スペクトラム」と呼ばれる。正確に認知されているとはまだまだ言い難い自閉症スペクトラムについて、発達障害に悩む人を数多く診ている「パークサイドこころの発達クリニック」(福岡県)の原田剛志院長に話を聞いた。(聞き手/ライター 羽根田真智)

自閉症スペクトラムに見られる
「3つの特徴」と感覚過敏

――自閉症スペクトラムとは、どういう病気、あるいは障害でしょうか?

原田剛志氏原田剛志
パークサイドこころの発達クリニック院長
福岡大学医学部卒業。専門は児童精神医学。福岡大学病院精神神経科に入局、同大学病院、鹿児島県伊敷病院などの勤務を経て、2011年に児童精神と発達障害を専門とした「パークサイドこどものこころクリニック」を開設。2016年に現在の名称に変更。現在、同クリニック理事長兼院長。訳書に『対象関係論の基礎―クライニアン・クラシックス』(共訳、新曜社、2003年)など。

 まず、「病気」「障害」という言葉ですが、これらは適切とはいえません。「傾向」という意味で捉えていただければ、自閉症スペクトラムについて理解を深められるのではないかと思います。

 自閉症スペクトラム(ASD)は、ADHDと同様に、生まれつきのものです。脳の発達機能に偏りがあり、いわゆる「普通」「常識」とされる状態とは違った考え方、行動が見られます。 

 特徴は、3つ。「社会性の障害」「コミュニケーションの障害」「イマジネーションの障害」です。自閉症スペクトラムの特性を3つにまとめた英国の児童精神科医ローナ・ウイングの名前を取って、「ウイングの3徴」と呼ばれています。

「社会性の障害」は、常識や社会の暗黙のルールから外れた行動を取ってしまい、周囲の人と相互的な交流を行うことが困難なこと。常識を知っているか知っていないかではなく、常識を知っていても、その価値が分からず、日常生活で使えないのです。

 また、「コミュニケーションの障害」は、相手のボディーランゲージや表情が示すところを感じ取れない、言葉の裏の意味を取れない状態です。冗談が通じない、言葉通りに受け取ってしまう、なども含まれます。