前回、わが国における「市場主義3.0」の具体的な姿として、経済システム面、および、社会システム面における労使関係システム(雇用システム)について述べた。最終回となる今回は、前回からの続きとして、社会システムにおける社会保障システムのあり方を論じたうえで、わが国で「市場主義3.0」モデルを実現するための、政治プロセスの改革についてふれる。

成長促進的な「社会保障
システム」を構築する

 前回みてきた「労使関係システム(雇用システム)」の構築にあたって、密接不可分の役割を果たすのが「社会保障システム」の改革である。従来の社会保障システムは、「残余的な福祉」を基本にしてきたが、人口高齢化の進展に従って近年では「引退世代の生活保障」という性格を急速に強めている。ただし、いずれにしてもそれは、社会的弱者を「市場原理から守る」という基本的発想に基づいている点は変わっていない。

 しかし、「市場主義3.0」モデルにおける社会保障システムは、「市場原理に適応する」ためのものという要素を強めなければならない。より踏み込んでいえば、社会保障を経済成長に抑制的なものでなく、経済成長を促進するものとする必要がある。

 この点に関し、主要OECD諸国における社会保障と経済成長の関係を検証してみよう。経済成長率(1997~2009年)を、①社会保障関連支出のGDP比、および、②社会保障関連支出に占める現役世代のための支出(家族政策および積極的労働市場政策)の割合を説明変数として回帰分析を行った(図表)。(t値は数値が大きいほどパラメータの信頼性が高く、p値とは、どこまで低い確率水準でパラメータの信頼性が失われることはないといえるかを示す統計値)