「口約束」を証明するのは難しい

 遺言書の内容を姉と弟が確認します。その内容について姉はこう言います。

「『全財産』なんて言うけど、母さんは少しも財産なんて持ってないじゃない」

 この発言について理解が追いつかない弟。

「え? 母さんは父さんから相続した財産が結構あるじゃないか?」

 これに対して姉は言います。

母さんが父さんから相続した? 父さんの遺産を誰が相続するかなんて、まだ決めてないじゃない? 現に父さん名義の不動産は父さんの名前のままだし。父さんの遺産の分け方は、これから私とあなたの2人で話し合いをして決めるのよ」

「いやいや。父さんの遺産はすべて母さんが相続するって、3人の話し合いで決めたじゃないか! ここにきて3人で決めた約束を無かったことにするのかよ?」

「証拠は? 話し合いをして私が納得したという証拠はあるの? 私は納得した覚えなんてないわよ? そんな話し合いはしていないわ。文句があるなら裁判しましょ」

 このような形で争いが発生します。