4000人分の仕事を自動化するプロジェクト

 ソフトバンクはペーパーレス化&DXに取り組むことで、どんな良いことがあったのだろうか。

 ソフトバンクでは2年前から「デジタルワーカー4000プロジェクト」に全社で取り組んでいる。これは、4000人分の仕事をデジタル技術を活用して自動化しようというものだ。開始して2年たった現在、人間がやっていた作業のうち、目標の半分に当たる2000人相当の作業を自動化できたという。そしてその結果、業務委託費を95億円削減でき、600人の従業員を成長領域に配置換えできたそうだ。

「DXの第一歩はペーパーレス」10年前に紙をなくしたソフトバンクは、今どうなっているのかソフトバンクが取り組んでいる「デジタルワーカー4000プロジェクト」 写真:ソフトバンク
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 このプロジェクトで得られる効果は大きく3つあると吉岡氏は振り返る。1つ目はコスト余力。吉岡氏は、「デジタル技術の費用対効果がかなり良好。正しく導入すれば必ずコストは浮く」と断言した。そして浮いたコストで成長領域を育て、収益化するための投資に充てることで、新事業に取り組みながら、全社の固定費は増やさずそのままで運用できたという。

 2つ目は、社員の時間に余力が生まれるという効果。数人で何時間もかけていた作業がクリック1回で済むようになるなど、業務にかかる時間を短縮できるようになった。浮いた時間で人材育成の強化に取り組んだり、従業員の自己成長を促す制度を作って参加してもらうなどの機会を作り、新しいスキルの習得などの教育にかける時間ができたと語る。

 3つ目は新しい課題解決だという。例えば現在、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため、対面営業ができない。そこで、オンラインでの商談を始めたところ、顧客との接触も容易になり、実際に先方に出向いて商談をしていた当時に比べると、商談の数が5.5倍に増加し、生産性が上がっているという。

 以上のような効果があったからこそ、人材の配置転換や軌道に乗るまでの投資など、成長分野に注力する態勢が素早くできたと吉岡氏は語る。さらに、ペーパーレス化やデジタル化の素地があったからこそ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大など環境変化への対応も容易かつ迅速にできたとしている。