日本の企業の中でもかなり早く、約10年前から本格的にペーパーレス化を進めていた企業がソフトバンクだ。その動きは今も続いており、ペーパーレス化はDXとなって、2000人の業務自動化、95億円の業務委託費削減、人事部門のAI活用などの成果を上げているという。ソフトバンクはどのようにペーパーレス化を行ってきたのか。ダイヤモンド社・デジタルビジネス局が2021年3月8日に、エフアンドエム、SmartHR、コンカーの協賛を得て行ったWebセミナー「脱はんこ・ペーパーレスの実践 ~バックオフィスのデジタル変革~」の基調講演の様子をお伝えする。(ダイヤモンド・セレクト編集部、ライター 笹田 仁)
DXの第一歩はペーパーレス化。
紙が残っていたら、変革はできない
「脱はんこ」や「ペーパーレス」と聞くと、「古い」「当たり前」と感じる人もいるかもしれない。今や、デジタル技術でビジネスモデルを根底から改革、さらには企業としてのあり方まで一変させる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が花盛りだ。しかしよく考えてほしい、DXで最初に乗り越えなければならないハードルは「脱はんこ」や「ペーパーレス」ではないだろうか。
ソフトバンクで総務本部副本部長を務める吉岡紋子(あやこ)氏は、日本テレコム(現ソフトバンク)に入社以来、営業、社長付を経験し、2006年より総務を担当している。現職である人事総務統括 総務本部 副本部長には2019年に就任しており、2020年には同社としては初めての「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」の実行や、本社移転で指揮を執った人物だ。
吉岡氏はまず、現時点でのソフトバンクの収益源と、今後の成長戦略について説明した。ソフトバンクというと携帯電話をイメージされる人が多いと思うが、ソフトバンク全社の収益は、携帯電話事業の他、法人事業や流通事業、3月1日にLINEとの事業統合を果たしたヤフーの事業、そして新領域で構成されている。その中でも「PayPayなどの新領域の事業で新たなユニコーン企業を育成していくことで今後の成長を目指している」と付け加えた。つまり、ソフトバンクは恒常的に新事業領域を開拓し、自社を変革させていかなければならないということだ。
そのソフトバンクがデジタル化に取り組み始めたのは、もう10年以上前のことだ。「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉が流行し始めたのはここ数年だが、ソフトバンクはそれよりもかなり早くに、DXに取り組んでいたということになる。恒常的に新事業領域を開拓し、自社を変革させていかなければならないという背景があり、自然にデジタル化の道を歩み始めたという。
そして吉岡氏はDXに挑もうとする企業とその関係者に「DXの第一歩はペーパーレス化。紙が残っていたら、変革はできない」とアドバイスする。一見、当たり前のように聞こえるかもしれないが、このあと説明するソフトバンクのペーパーレス化&DXの歩みと成果を聞けば、実に大きな意味がある言葉だと実感できるはずだ。