新型コロナウイルスの流行により、十分な営業活動ができず、業績が落ちて苦しむ企業が増えている。人に会えない、企業を訪問できないといった状態が常態化する中で、新しいスタイルを模索している営業マンも多いはずだ。これからの営業活動はどう変わるのか。企業はこれから何をすべきなのか。10月30日に3社(セールスフォース・ドットコム、オプロ、ベルフェイス)の協賛のもと開催されたダイヤモンド・オンラインのWebセミナー「ネクストノーマルを見据えて 企業を強くする営業組織改革とは」で、ローランド・ベルガー日本法人会長を務めた遠藤功氏が語った内容を紹介する。(ダイヤモンド・セレクト編集部、ライター 笹田 仁)

2020年、日本人は初めて「VUCA」の意味を思い知らされた

 「営業は足で稼ぐ」という言葉があるほど、営業マンはとにかく商談相手と直接会い、関係を深めることで商談を成立させてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、多くの企業が従業員をテレワークで在宅勤務とし、感染を心配して直接会うことを拒否する人もいる。「営業活動」というもののあり方を根本から考え直さなければならなくなったわけだ。

 遠藤氏は、5~6年くらい前から欧米の経営者が使い始めた「VUCA」という言葉を取り上げた。VUCAとは「Volatility(不安定)」「Uncertainty(不確実)」「Complexity(複雑)」「Ambiguity(曖昧模糊)」の4つの単語の頭文字をつなげた造語だ。以前に比べて、企業や経営者を取り巻く環境が、先の読めないものになっており、どんどん不安定になっている。その中でも企業を経営していかなければならないということを意味している。遠藤氏は「日本人にもVUCAという言葉とその意味を知っている人は多いが、新型コロナウイルスによる労働環境、生活環境の激変を体験して、初めてVUCAという言葉が指す意味を知ったのではないか」と指摘した。

 全世界で人の移動がほぼできなくなったことは、経済にも大きな影響を及ぼした。IMFが8月に発表した調査結果によると、2020年と2021年の2年間で12兆5000億ドル(約1300兆円)もの所得が消失するという。2020年4月~6月の日本のGDPも、28.1ポイントのマイナスで終わった。これだけ経済が縮小すると、戻るまでにかなりの時間がかかる、あるいは、もう戻らないかもしれない、と遠藤氏は予測する。

 経済が縮小した環境では、新陳代謝、業界再編が起こる。強いところがどんどん強くなり、力がないところはどんどん駄目になる。そしてそういう企業から失業者があふれ出す……これまで以上に、弱肉強食の世界に突入したのだ。

どこもゼロからのスタート。負の遺産を清算するチャンスだ

 弱肉強食の世界に突入したと言われてしまうと、これから先、良いことがないのではと思うが、「この新陳代謝、業界再編は、日本社会と日本企業が抱えている負の遺産を清算するチャンスでもある」と遠藤氏は説く。平成の30年間、日本企業は昭和の考え方、昭和の発想を引きずったまま、何も変わらずにいた。その結果が30年間にわたる緩慢な衰退だ。

 新型コロナウイルスにより、世界中の企業が、そのあり方、経営のあり方、営業活動のあり方を大きく変えざるを得なくなった。そして、普遍的な正解を見つけ出した企業もいない。すべての企業が企業のあり方などをゼロから作っていかなければならなくなったわけだ。「今までのやり方がまったく使えなくなってしまった」と嘆くよりも、「どの企業も同じゼロからのスタート」と前向きに捉えるべきだと言うことだ。