「少数民族問題」への
政策の正当性をアピール
5月11日、中国国家統計局が10年に一度発表される人口動態をめぐる国勢調査の結果を公表した。総人口は14.1億人と、前回(2010年)よりも7206万人(5.38%)増えたが、年平均伸び率は前回の0.57%から0.53%と下がり、かつその内訳に目を向けると、労働人口に当たる15~59歳が63.35%(6.79ポイント減)、65歳以上が13.50%(4.63ポイント増)となり、中国が正真正銘の高齢化社会に入っている現実が浮き彫りとなった。
人口という要素は、将来的な経済成長へ与え得る潜在的リスクといえ、本連載の核心的テーマである「中国共産党の正統性」の行方を考察する上でも、引き続き重要な指標になっていくであろう。
同日記者会見に臨んだ寧吉哲統計局局長は、人口構成内訳における「民族」の項目を次のように紹介している。
「漢族人口は12億8631万人で91.11%を占める。各少数民族人口の合計は1億2547万人で8.89%を占める。2010年時と比べ、前者の人口は4.93%、後者の人口は10.26%増え、少数民族人口の比重が0.40%上がったことになる。民族人口の安定的成長は、中国共産党による領導の下、わが国の各民族が、全面的に発展、進歩している面貌を充分に体現しているといえる」
この文言を目にしたとき、中国共産党指導部として「少数民族問題」で政治的圧力を感じている中、ありとあらゆる場面を利用する形で、党のこの問題における政策が正しく、成功している経緯を証明していきたいのだなと筆者は受け取った。
筆者から見て、中国共産党の正統性を脅かすという意味で、習近平政権が目下最も懸念している不安要素の一つが、新疆ウイグル自治区における「人権問題」である。これが引き金となり、西側諸国を中心に、来年2月に開催予定の北京冬季五輪への集団的ボイコットが勃発する局面を危惧している。
共産党はこの期間、新型コロナウイルスへの対応や香港問題などをめぐって国際的に孤立する事態を恐れてきた。自国開催の五輪への参加ボイコットという問題は、それがより鮮明に可視化される舞台となり、中国共産党の政策や統治能力への信用性に、国内外双方から疑問が投げかけられるリスクを伴っているのである。