「長い日米関係の中でも例がないのではないか。あり得ない」
外交官人生の大半を日米同盟の強化に捧げてきた外務省幹部OBは気落ちした声で語った。首相の菅義偉と米大統領のジョー・バイデンによる初めての日米首脳会談の延期のことだ。
当初の予定では、首脳会談は4月9日に米ワシントンでセットされていた。それが1週間延期されて16日に。3月末ごろからワシントンの日本メディア関係者の間では、「首相訪米延期の可能性あり」の情報があったようだが、日本政府側は「そんなことあるはずがない」と完全否定していた。
ところが、官房長官の加藤勝信は2日午前の記者会見で突然延期を発表した。ただし延期の理由について、加藤は「会談に万全を期するため」と述べただけ。このため「万全を期する」との発言を巡って新型コロナウイルスの感染防止なのか、最大のテーマとなる対中政策についての日米間の調整なのかは見方が割れた。
確かにバイデンがコロナウイルスに極めて敏感なのは公知の事実。菅を受け入れるに当たっての米政府内の意見調整に時間がかかった可能性が高いとみられている。政権幹部もこう語る。