日本がDXで世界をリードできる「三方よし」文化の強み、 冨山和彦と宮田裕章が議論冨山和彦氏(左)と宮田裕章氏(右)

今、世界各国がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、時代が大きく変化している。しかし、コロナ禍で日本は大幅に遅れていることが明らかになった。どうすれば、日本は明るい未来が見えるだろうか。『データ立国論』(PHP新書)を出版した宮田裕章・慶應大学医学部教授と、冨山和彦・経営共創基盤(IGPI)グループ会長の対談を3回に分けてお届けする。3回目は日本がこれから目指すべき道について語った。(聞き手/PHP総研主席研究員 亀井善太郎、構成/阿部久美子)

*2021年3月19日に行った対談をもとに構成しています

日本がこれからデジタル化で目指すべき道は?
キーワードは「グレート・リセット」

――日本がデジタル時代の遅れを挽回し、むしろ世界に対してイニシアチブを取ることができる道はあるのでしょうか?

宮田 デジタルの部分が遅れているという認識をみんなが共有するようになりました。大きな危機感を共有できているからこそ、大きく転換していくチャンスといえるかもしれません。じわじわとではなく、シリコンバレーや中国がデジタルで一気に急成長を成し遂げたように、大きく変わる。2つ、3つ先ぐらいの世界に日本全体がトランスフォーメーションできれば、そこに可能性があるのではないかと思います。そのキーワードになるのが社会を構成している旧態的システムを再考する「グレート・リセット」です。

冨山 ここからの挑戦というのは、おそらくインクルージョン(多様な人々が互いに個性を認め合って働き生きること)とDXがどう調和できるかです。ここは、デジタル化が先行した勝ち組であるアメリカも中国も欧州も、まだ答えが出せていないところだと思います。

 そういった包摂的な社会を日本がつくっていけたら、またもう一度、違ったかたちで世界の先端に立てるような気がしていますが、どう思いますか?

宮田 ええ、それこそが、私が一番大事にしているところです。中国やシリコンバレーの成功も、世界からある種クエスチョンを突きつけられています。サステナビリティ、ダイバーシティ、インクルージョン、といった訴求がないと、世界の支持は得られなくなっています。支持が得られないということは、データが使えない。

 日本に可能性があるとしたら、サイバー空間を、多くの人々が幸せに生きていけるようにする方向で活用していくことです。とくに、多様性部分に訴求することは、日本が大事にしてきた「三方よし」の文化にもつながるところがある。可能性のある未来を描けるとしたら、そういった分野のビジネスの発展のさせ方だと私も思います。