今、世界各国がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、時代が大きく変化している。しかし、コロナ禍で日本は大幅に遅れていることが明らかになった。どうすれば、日本は明るい未来が見えるだろうか。『データ立国論』(PHP新書)を出版した宮田裕章・慶應大学医学部教授と、冨山和彦・経営共創基盤(IGPI)グループ会長の対談を3回に分けてお届けする。(聞き手/PHP総研主席研究員 亀井善太郎、構成/阿部久美子)
*2021年3月19日に行った対談をもとに構成しています
新時代のリーダーに必要なのは信長型破壊パワー
――冨山さんは、この際思いきって40代へと若返りを図るべきだということですが(前回の対談)、世代交代をする上で、50代以上が心掛けておかねばならないことは何でしょうか?
冨山 これからの時代のかじ取り役にふさわしい人を選び、バックアップすることでしょうね。革命性を持っている人を選ばなければいけない。言うなれば、織田信長タイプの破壊型の人を選ぶ、ということ。そこに、受け渡す側の器が問われます。
日本のトップ人事は、往々にして自分よりスケールの大きい人を後継者にしない傾向があります。社長の専権事項で後任者を選ぶと、その社長の縮小コピーみたいな人になることが多い。それでは会社は変われない。いや生き残っていけない。そういう意味では、トップ人事は指名委員会制にすべきです。
さらに、大きな変革をしようとすると横やりが入るものなので、改革がうまく進むよう、50代以上は邪魔を排除することに尽力すべきです。風通りをよくし、物事を動きやすくする。いわばゴッドファーザー的な後ろ盾になるのがいいんです。
――なるほど、ゴッドファーザーですね。正解がないところを考える力や対話する力といった、若手が思考の筋力を養っていくには何が必要でしょうか?
冨山 一つは、高等教育のあり方として、コペルニクス的転換をしなきゃダメです。ただ、それ以上に問題なのは、企業のあり方。どういう人を採用するか。基本的に企業の採用で愛されるのは、従順で、頭も悪くない、一匹狼的ではなく仲間の面倒見がよくリーダーシップがある、というタイプ。上司が期待している正解を、従順に探しにいく人を採る。そして入った瞬間から、陸軍部隊として同質的集団による地上戦で役に立つ人材としての思考作業を求めるわけです。ここを根本的に変えないといけない。
今、自分で考える頭を持った本質的に優秀な人がベンチャーに行くのは、それに気づいているからですよ。建前的には違うことをうたっている企業でも、実際、中に入ったら求められるものは陸軍的なものだとわかっているのです。だったらベンチャーでストレートに価値訴求をしていこうと考える若者が増えている。そういう人が入りたいと思う企業に変えていく必要があります。