今国会で、超党派による「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律案」が審議にかけられる。本法案は医療的ケア児の存在と窮状を知った国会議員が関係者を集めて、2015年から少しずつ検討を重ねてきた。「障害児が生まれたら」とためらうことなく出産でき、障害児を生んでも親が働き続けられる。そんな社会実現の礎となる法案の成立に、大きな期待が寄せられている。(医療ジャーナリスト 福原麻希)
「医療的ケア児」とは、人工呼吸器やたんの吸引、栄養を摂取するための胃ろうなど、日常的に医療的なケアが必要な子どものこと。先天的な難病、早産、出産時の事故、出産後の病気などによって、乳児(満1歳未満)の臓器や器官に障害が見つかることが多い。
そんな子どもたちは新生児集中治療管理室(NICU)等で長期入院し、手術などの治療を何度も受けた後、退院して自宅などへ帰ることができるようになった。その理由は、日本は新生児死亡率(生後28日未満)も乳児死亡率も世界最高水準になるほど、とても低いからだ(*1)。
この医療的ケア児は、2005年以降、この10年余りで2倍の約2万人にまで増えた(*2)。医療的ケア児には、寝たきりで知的障害が重なっている子どものほか、動ける子ども、知的障害のない子どもなど、様々なタイプがいる。
医療的ケア児を育てる際の特徴として、24時間にわたって医療的ケアが必要になることが多い。夜中のケアで親は数時間おきに起きなければならないため、いつも睡眠不足に。昼間も医療的ケアが必要という理由で、親は学校の送り迎えと授業中の付き添いや校内待機を求められ、仕事を辞めざるを得ない状況に追い込まれている。
さらに、「医療的ケア児」はこれまでの障害児のカテゴリーにあてはまらないため、法律も、医療・福祉・教育の制度も現状に追いついていない。その結果、親が子育てを全て抱え込む状況が続いている。