今年3月、「人工呼吸器を装着している男児が居住区の小学校へ就学するための手続きとその結果の特別支援学校を指定された通知は違法である」と提訴した裁判は、横浜地方裁判所で原告敗訴の判決が出た。男児と保護者の「地域の小学校生活は特別支援学校より危険か」「地域の小学校での教育より、特別支援学校のほうがふさわしいか」「それは、誰が決めたのか。本人・保護者に教育の選択権はあるのか」という疑問に東京高等裁判所はどう答えるか。控訴審が始まった。(医療ジャーナリスト 福原麻希)
控訴審で転居に伴う
経済的・精神的苦痛を取り戻す
2018年当時、川崎市に住んでいた人工呼吸器を装着する光菅和希君(現在9歳)は居住地域の小学校への就学を希望したところ、川崎市教育委員会(以後、川崎市教委)から特別支援学校の指定を受けた。行政処分(決定)には強制力がある。当初、和希君と保護者は川崎市教委との話し合いを続けていたが、途中で打ち切られてしまった。
このため、やむなく川崎市教委の判断と神奈川県教育委員会(以後、神奈川県教委)の処分取り消しを求めて提訴へ。だが、今年3月、横浜地方裁判所は神奈川県教委の決定は違法でないとして、原告(和希君と保護者)の訴えを棄却した(既出記事『「人工呼吸器でも普通学級で学びたい」重度障害児の訴えはなぜ退けられたか』)。
しかし、その判決文の内容は、数々の事実認定による誤りがあった。さらに原告と弁護団は、争点に対する判断にも著しい疑義が見られ、結論が変更される可能性があるとして、判決後すぐ、東京高等裁判所に控訴した(※筆者注:控訴詳細は本稿最後に)。