業績堅調な企業が突然の経営破綻。今年5月、九州で指折りの設備工事業者が破産手続き開始を申し立て、関係者を驚かせた。だが、これは取引先の与信審査担当者などにとって「反社チェック」の重みが一変したことを象徴する事例といえそうだ。(東京経済東京支社長 井出豪彦)
業績堅調な企業が
突然の経営破綻
本連載は編集部から「倒産のニューノーマル」というテーマを与えられている。新型コロナウイルスの感染拡大で企業倒産が新しい局面に入ったことからスタートし、そろそろ1年がたとうとしているが、今年5月、コロナとはまったく無関係に、これぞニューノーマルという驚きの大型倒産が起きた。
大分市に本社を置く設備工事業者「九設」は5月10日に大分地裁に破産手続き開始を申し立て、翌日開始決定を受けた。破産申立書によれば、債権者292人に対し、負債は約30億円に達した。もちろん今年県内最大の倒産だ。
今年2月期決算で売上高は51億1800万円(前期比2.0%増)で、給排水設備や空調設備などの工事を手掛ける「管工事」の業者としては県内トップ、九州全体でも指折りの大手といえる。しかも、営業利益は5000万円と前期より2割程度落ちたとはいえ税引き後当期純利益は3600万円とまずまずもうかっていた。
設立が1996年と比較的業歴が浅く、資本蓄積など財務内容がいま一つという面は否めなかったが、2月末時点の現預金は7億2700万円あり、数字だけで判断すると、それからわずか2カ月余りで倒産しそうにはとてもみえない。
実際、破産申立書には「新型コロナウイルス感染拡大の影響もほぼなく、ウイルス対策を目的とした工事需要の拡大もあって、業績は堅調に推移していた」とある。
それがなぜ突然倒産するに至ったのか。