ジャヤント・マルホトラさん(23)は、遺体が並ぶ光景を決して忘れないと語る。彼と父親は、新型コロナ感染症で死亡した人々のためにニューデリーで無料の火葬サービスを提供している。疲弊した作業員らは火葬用のまきの山を次から次へと準備したが、遺体が運び込まれるペースはすさまじく、作業が追いつかない。
こうしたヒンズー教の火葬の儀式は、コロナ禍にあえぐインド国民の悲しみの象徴となった。
「昼までに20人の遺体を火葬したが、その作業が終わる前にさらに10人の遺体が運び込まれた。午後にはさらに10体増えた」。マルホトラさんは4月から5月にかけての状況をこう話す。「そんな恐ろしい状況だった」
それぞれの遺体には人生の、そして死のストーリーがあった。ある男性は、病院のベッドが空くのを待って駐車場で一夜を過ごしている間に死亡した。国外で暮らす子供たちが帰国できないため、近隣の人々や遺体安置所関係者らによって火葬場に運び込まれた夫婦の遺体もあった。マルホトラさんによれば、コロナの家庭内感染が広がる中、2人、3人、場合によっては4人もの身内を失って悲しみに暮れる親族もいたという。