生活習慣病の予防においては、良い生活習慣を身に付けることが重要である。しかし長年かけて培った習慣を変えることは容易ではない。医師も患者の行動を変えることに苦労している。そうした中で、宮城県登米市では、特定健康診査で簡単な「ある数値の測定」を実施したところ、長年頭を悩ませていた市民の高血圧問題が目に見えて改善に転じたという。その方法とは。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
「行動変容」の難しさが
内科医を悩ませてきた
医学の進歩やライフスタイルの変化によって、私たちの寿命は延伸し、今や「人生100年時代」を迎えている。厚生労働省のウェブサイトにも、「2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています」とある。筆者は10年ほど前まで高齢者施設を取材で頻繁に訪れていたのだが、当時でさえ、どこの施設にも100歳以上の入居者がざらにいた。
文字通り寿(ことほ)ぐべきことだが、一方でクローズアップされているのが、「認知症」や「寝たきり」の問題だ。これらは「病気」というより「老化」の表れであり、治療のための特効薬やワクチンは、今のところ開発されていない。
効果があるとされているのはやはり、運動や食事といった生活の土台となる習慣を変えること、すなわち「行動変容」なのだが、これが難しい。長年かけて培った食の好みや生活習慣は、医師からどれほど脅されても、おいそれとは変えられないからだ。