睡眠は横になるだけで疲れを癒やすことができる最良の疲労回復法だ。しかし、睡眠時間は十分なはずなのに目が覚めたときに疲労感がある、という人は“朝疲れ”状態に陥っている可能性が高い。高血圧・糖尿病など生活習慣病とも関わりが深い朝疲れについて専門医に聞いた。(清談社 真島加代)

7時間寝ても疲れが取れない……
朝疲れの正体

目覚めが快適でない男性睡眠時間が十分なのに、目覚めた時点で疲労を感じるのは要注意。睡眠時間はもちろんだが、睡眠の「質」もよくしなければならない Photo:PIXTA

 睡眠は私たちの体や脳に休養をもたらす重要な生命活動のひとつだ。近年では、慢性的な睡眠不足を「睡眠負債」と呼び、不健康な生活習慣として注目を集めている。

 しかし、睡眠負債の返済は、ただ睡眠時間を増やせばいい、というわけでもないらしい。

「十分な睡眠時間を取ったはずなのに、朝に目覚めたときに疲労を感じている人は要注意。質の悪い睡眠による“朝疲れ”をしている可能性が高いです」

 そう話すのは、池谷医院(東京・あきる野市)院長の池谷敏郎氏だ。池谷氏によると、朝疲れの原因は睡眠時間の短さだけでなく「睡眠の質の悪さ」が関係しているという。

「質が悪い睡眠とは、一晩の眠りが浅いこと。たとえば、寝付きが悪かったり、夜中に何度も目が覚めてしまったりという悩みがある人は、全体の睡眠時間が長くても疲労が回復しにくい状態です。また、眠りが浅い日が続くと体内時計が狂い、自律神経の乱れから、さまざまな体調不良を招いてしまいます」

 特に夏場は、日照時間の長さや寝苦しい夜が続く影響で、睡眠のリズムが狂っている人が少なくない。そのため、近年のような猛暑の夏が終わり、眠りやすい秋になっても睡眠不足に悩むケースが少なくないのだ。

「熟睡の条件は“体の中心の温度を下げる”こと。通常は手のひらや足の裏の血管を通して体温を外に逃がし、深い睡眠に入ります。しかし、自律神経の乱れや血管のしなやかさが失われていると、上手に体温を逃がすことができません。その結果、眠りが浅くなり、自律神経の乱れを引き起こす、負のスパイラルに陥ってしまうのです」