洗練された頭脳が勝つ世界
このあいだ、外資系のコンサルティング・ファームの人と話す機会があった。仕立てのいいスーツと誰からも好感を持たれそうなピンストライプのシャツに身を包んだコンサルタントは、気持ちのいい笑顔を浮かべて私に挨拶をした。
挨拶のあと、たがいのバックグラウンドについて一通り話し、それからビジネスの話に入った。複雑なデータが分析され、緻密な予測が立てられ、最後に実に理にかなった解決策が提示される。すべてがとてもソフィスティケート(洗練)されていて、ロジカルで美しい。
彼らはこの地球上でおそらくピカイチの頭脳の持ち主だ。国内外のベストの大学を卒業して、「東京にタクシーは何台走っているでしょう?」「マイクロバスにピンポン球はいくつ詰められるでしょう?」という難問奇問に難なく答えて入社、「アップ・オア・アウト(昇進するか、辞職するか)」の厳しい競争を勝ち抜いていく。彼らはエリートとして社会から一目置かれ、サラリーマンの平均給与よりもずっと高い報酬を手にする。
思うに、彼らは「人間」の頂点に君臨する存在なのだ。平たく言えば、「一番アタマのいい奴」。動物的なものをとことん削ぎ落として、人間的なものを極限まで高めていく。日本、とりわけ東京という場所は、ニューヨークよりも、ロンドンよりも、世界中のどの都市よりも、彼らのような人材が生きやすい場所だ。身の安全が完全に保証されていて、あらゆる物事が腕力のあるなしではなく、言葉と論理を操る力で決着していく。