コロナ禍でビジネスパーソンを取り巻く環境も大きく変わりました。「リモートで可能な業務にもかかわらず、出社を要請される」「会社に不満が募り転職も考えているが、なんとなく働き続けてしまっている」……といった方も多いのではないでしょうか。こうした状況の背景には、「現状維持バイアス」という心理作用があります。今回は、ビジネススクールを運営するグロービスで講師を務め、国内外のビジネス事情に精通している朱氏が、身近に潜む現状維持バイアスと、その解決方法について解説します。
ビジネスシーンで判断を狂わせる?
現状維持バイアスとは
ビジネスや自己啓発関連の書籍で頻繁に目にする「現状維持バイアス」という言葉。これは「未知の経験や変化を避け、現状維持を望む心理作用」のことを指します。現状維持バイアスに陥ることで、変化=「安定の損失」と捉えてしまい、変化を避け、現状のままでいることを望むようになります。
実はこの現状維持バイアス、想像以上に私たちの生活を支配しています。「リスクを恐れ、リモートワークを許可しない企業」や「転職をしたいと思いつつ転職に踏み切れない社員」だけでなく、さらに身近な例だと「同じ銘柄のビールばかりを購入してしまう」ことも現状維持バイアスの影響です。
確かに現状維持を選択すれば、短期的に今よりも悪い状況になることはありません。ただし、長期的スパンでは、変化をしないことで少しずつ周囲に後れを取り、損失を被ってしまうリスクが存在します。そういったリスクを回避し、革新的なビジネスを成功させたいなら、まずは自分にも社会にも現状維持バイアスがかかっていることを知り、意識的に打破する必要があります。