妻の浮気が原因で離婚。突如、5歳の息子との父子家庭になった。手元に残された全財産は90万円。定時退社で保育園へ息子を迎えに行く毎日で、残業代ゼロ。年収400万円で、カツカツの生活だった。
ギリギリの節約生活で、4年で1000万円を貯め、本格的に株式投資を開始。紆余曲折を経ながらも某企業の大株主になり、資産2億円以上を築いた。
いまや成長し、就職した息子とふたりで焼鳥屋に行ったとき、これまでの半生を振り返り、「投資家」と「労働者」の話をした。
離婚して父子家庭になり、全財産90万円から資産2億円以上を築いた父親が、投資術を初公開。いま息子へお金と投資の話を教える『どん底サラリーマンが株式投資で2億円』。
いかに持株数でトップ10以内に入るか
天国から地獄へ真っ逆さまに落ちたような現実が受け入れられなくて、しばらくは
自分の証券口座にログインするのも嫌になった。
絶望するしかない状況のなか、ふと思い出したことがあった。
それはサラリーマンになり、株式投資を始めたばかりの頃に抱いた『会社四季報』の株主欄に載るという野望だ。
人は夢や目標があると、絶望的な状況でも前に進むことができる。
多くの資産が吹き飛んだものの、まだ株式評価額は8000万円ほどあった。
軍資金1000万円で株式投資を始めたばかりなのだから、それが8倍になっていれば立派なもの。
かつての野望の実現に向かって頭を切り替え、再び株式投資と向き合う決意をした。
そこで改めて目を向けたのは前述のA社。この株を買い進めたのだ。
A社は時価総額が約50億円。
この程度の小型株なら8000万円で買い進めれば、トップ10にランクして、大株主として株主欄に名を連ねることは十分可能だと思った。
このときは、A社の株価が上がるか下がるかより、いかに持株数でトップ10以内に入るかを目標に、少しずつ値下がりする株を買い増した。
それが結果的に功を奏す。
ライブドア(マネックス)・ショックからおよそ1年後、23歳で心に思い描いていた野望がついに叶った。
2006年の『会社四季報』でA社の株主欄に名前が載ったのだ。
株式投資で唯一、生き残ることができる道とは?
『会社四季報』の株主欄に名前が載るという野望を達成した後、自分の株式投資の手法は大きく変わった。
それが一度買ったら超長期で保有するバイ&ホールドの「ほっとけ投資」だ。
米国同時多発テロ後の暴落、ライブドア(マネックス)・ショックで株価の乱高下に振り回されたことで、この「ほっとけ投資」にたどり着いた。
数年に一度あるかないかの大暴落の局面でなくても、年に何度かは調整局面が訪れる。
そもそも株価は日々上がったり下がったりしている。
その値動きにいちいち一喜一憂していたら、身が持たない。
サラリーマン投資家という立場なのに、それで仕事に手がつかなくなったら、安定した立場が脅かされる恐れだってある。
サラリーマン投資家は、決まった給料がもらえる安定した生活がベースにあるからこそ、株式投資ができる。
それなのに十分な資産をつくる前に、なんらかの事情で会社をクビにでもなったら大惨事だ。
株主欄に載ったことがきっかけとなり、投資家としての意識が「単に株を買う」のではなく「A社という会社を買う」という方向へ完全にシフトした。
100株でも株式を買ったら株主であり、その会社を部分的に所有していることになる。
それが株主欄に載るような大株主になれば、より実感を持って「会社を買った」という気分になれる。
「株を買った」のではなく、「会社を買った」と思えるようになると、株価の上下動が気にならなくなった。
だからこそ、ほったらかしにする「ほっとけ投資」というスタイルにたどり着いたのだ。
思考パターンを切り替えるだけで、投資スタイルも切り替えられるものなのだ。
株価の変動に踊らされなくなると、何か気になる事件が起こるたびに、仕事中にトイレの個室に駆け込んで証券口座にログインする必要もなくなり、心穏やかに目の前の仕事に打ち込めるようになる。
いま思い返してみても、「ほっとけ投資」にシフトしてからのサラリーマン人生は充実している。
「進化論」を体系化したチャールズ・ダーウィンは、「もっとも強い者が生き残るのではない。
もっとも賢い者が生き延びるわけでもない。
唯一生き残ることができるのは、変化できるものだ」という名言を残した。
この言葉は株式投資にも当てはまると思う。
自分の投資家人生も、状況に応じて次の3つの段階を踏んで変化してきた。
● ステージ1:徹底した節約で軍資金1000万円を貯める
● ステージ2:リスクを背負って信用取引を活用しながらの「ハイリスク投資」
● ステージ3:集中&超長期保有の「ほっとけ投資」
父子家庭で全財産90万円・残業代ゼロに陥ってからは、株式投資の軍資金1000万円を貯めることに注力した。
徹底した節約で軍資金1000万円を貯めてからは、信用取引を活用してリスクを許容しながら少々ハイリスクな取引で大きな資産を築いた。
そして、最終的に「ほっとけ投資」にたどり着いた。
このように投資スタイルは、ライフステージや資金量などに応じて臨機応変に変えるべきだ。
それが株式投資で唯一、生き残ることができる道だと思う。