北國銀行北國銀行は5月、インターネット専業を除く日本の銀行で初めて、勘定系システムをクラウドに移行させた Photo:PIXTA

メガバンクに先駆け石川県の第一地銀が
中核システムのクラウド化に動いた衝撃

 2021年5月、石川県の第一地方銀行である北國銀行は、日本の銀行(インターネット専業を除く)で初めて、勘定系システムをクラウドに移行し、運用を開始した。

 勘定系システムのクラウド化をはじめとする北國銀行の改革は、地銀業界はもちろん、金融業界全体のあり方にも一石を投じる破壊力がありそうだ。よって、本連載では今後数回にわたり、北國銀行の改革の金融業界への影響について紹介していきたい。

 大型連休中の5月3日、石川県金沢市の北國銀行本店には、日本ユニシスのオープン勘定系システム「BankVision(バンクビジョン)」を日本マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)」上に移行させるため、関係者が集まっていた。

 2月末から相次いで起こったみずほ銀行のシステム障害の余波もあり、金融庁も固唾をのんで見守っていたが、システムの移行作業は滞りなく完了した。

 勘定系システムのクラウド化を巡っては、システム業界から「信頼性に不安がある」というネガティブな声も一部で上がる。

 ただし、今回の移行に伴う障害はなく、地元顧客の間でも不安の声などは聞かれない。

 確かにクラウドサービスは10年代初頭にはシステム障害を起こして問題視されたものの、その後、システムの改善が劇的に進んでいるのだ。

 実際に、クラウドサービスは各国政府ですら利用を進めている。米国防総省はAzureを選定。米中央情報局(CIA)は米アマゾン・ドット・コムの「Amazon Web Services(AWS)」を採用済みだ。日本政府も、各省庁の情報システムを集約管理する「政府共通プラットフォーム」でAWSを採用している。

 北國銀行にとって勘定系システムのクラウド化は極めて重大な意味を持つが、同行が目指すシステム改革の全体像から見れば、ほんの一部でしかない。

 北國銀行は19年9月に、すでに個人向けインターネットバンキングをクラウド上で稼働させている。今回はそれに加え、預金や融資の残高管理など、法人向けを含めた顧客取引を支える勘定系システム(銀行における基幹システムの中核)をクラウド上に移管した。

 今後は、26年3月期を目途に、ATM、CRM(顧客管理)、人事などの「サブシステム」も次々にクラウド化させていく。