地方銀行業界では今、「システム共同化」や「デジタル投資」をキーワードに合従連衡が加速している。そんな中で、トップ地銀の一つである横浜銀行が、NTTデータと共同開発した業務デジタル化のためのアプリケーションを他の地銀に提供していく方針を打ち出した。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
横浜銀行がNTTデータと共同開発
業務効率化の“切り札”を他の地銀に提供
遅れてやってきた地方銀行業界の雄が、システムを巡る合従連衡に一石を投じるか――。
1月28日、大手地銀である横浜銀行(神奈川県)が、自社で利用している業務アプリケーションを他の地銀向けに提供する方針を打ち出した。
横浜銀とNTTデータが共同開発したこのアプリは、銀行中枢のシステムとネットバンキングなど外付けサービスのデータを連携するハブとしての役割を果たしている。
従来、銀行が新規サービスを追加する場合、始めに勘定系システムを改修することが不可欠だった。だが、このデータ連携の基盤を駆使すれば、新規サービスと銀行システムとの連携が簡便化。さらに、そもそも開発時の勘定系システムの大規模改修が不要になるため、開発期間とコストの極小化を実現するという。
例えば、この基盤を活用して開発されたのが、横浜銀が店舗窓口に設置したタブレット端末だ。かつては店頭で口座開設などを申し込む場合、顧客が書類に記入して、銀行の事務員がシステムに打ち込むという工程が必須だった。
一方の横浜銀のタブレット端末では、顧客が入力した情報が事務員の手を介さずに勘定系システムに直接反映される。つまり、タブレット端末自体の開発も速くできたことに加えて、端末のおかげで事務プロセスの構造改革も可能にしている。
横浜銀では、店頭タブレット端末を含めて約20業務がこの基盤で支えられている。同行の持ち株会社であるコンコルディア・フィナンシャルグループは、2019年4月に掲げた中期経営計画において、業務量を5年間で3割削減することを掲げているが、目標達成のための“切り札”がこの基盤というわけだ。
そんなアプリを外部提供する狙いについて、横浜銀の小貫利彦・執行役員ICT推進部長は「金融業界全体のデジタル化や効率化に貢献しつつ、使う仲間を増やして私たちもスケールメリットを狙う」と語る。
近年の地銀業界では、維持・投資コストの負担軽減を合言葉に、システムやデジタルをキーワードとした合従連衡が急加速している。とりわけ、上位地銀を中心とした陣営が形成され、さながら覇権争いの様相を呈してきた。
横浜銀も、「MEJAR」という地銀5行からなるシステム共同化グループに属し、2018年12月にはデジタル推進のための組織を共同で立ち上げてはいる。
だが、同行として焦りを感じていた部分もあるだろう。トップ地銀であるにもかかわらず、他の大手・中堅地銀のような目立った動きをしていたわけではないからだ。