コロナ禍や緊迫化する東アジア情勢を背景に議論が活発化する憲法改正。「改憲論議の広がりは当然のこと。しかし、よほど慎重にやらないと危ない」――。タブーや権力に何の遠慮もなく、真正面から議論をしかけてきた田原総一朗氏だからこそ聞き出すことのできた、時の権力者たちの本音とは?(聞き手/ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光)
緊急事態宣言が解除!
迫る東京オリンピック・パラリンピック
1934年、滋賀県生まれ。1960年に早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。1964年、東京12チャンネル(現・テレビ東京)に開局とともに入社。1977年にフリーに。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」等でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。1998年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ「城戸又一賞」受賞。早稲田大学特命教授を歴任(2017年3月まで)、現在は「大隈塾」塾頭を務める。「朝まで生テレビ!」「激論!クロスファイア」の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。 Photo by Teppei Hori
――6月20日に沖縄を除いて緊急事態宣言が解除されましたが、日本経済は大打撃を受けています。田原さんは京都大学大学院の藤井聡教授と共著で『こうすれば絶対よくなる!日本経済』という本を出しました。その中で藤井教授は日本経済を立て直す方策として、「プライマリーバランス規律の撤廃」「コロナ禍の終息まで消費税をゼロにする」「企業に対する粗利補償の実施」などを挙げています。
「プライマリーバランス」とは、国の基礎的な財政収支のこと。プラス(黒字)なら政府は国債の発行に頼らず国民の税金で必要な支出をまかなえる。マイナス(赤字)なら国債の発行に頼らなければならない。藤井教授は、このプライマリーバランスの黒字化にこだわるのをやめよと、このように提言している。
日本は中央銀行を持ち、「円」という通貨を発行している。政府は任意に通貨をつくり出す能力と権限を持っている。だから政府が「自国通貨建て」の借金によって、破綻や破産をすることは考えられない。となると、プライマリーバランスを黒字にしなければならないという根拠も成り立たないというのだ。
これはMMT(現代貨幣理論)のポイントでもある。ほかの経済理論は、中央銀行をモデルからはずしているものが多いが、MMTは中央銀行を理論の中に含んでいる。政府が破綻するリスクを前提としていないのだ。バイデン米大統領は今、まさにこれを行おうとしているようだ。
世界の多くの国はコロナ禍で減税を実施している。また、業種を問わず所得補償を行っている国も多い。日本では、飲食業など自粛要請の対象となる業種には補償があるが、これだけ国民の経済活動を制限しておきながら、対象外の業種には補償がない。藤井さんは、「これではまるで国民への虐待」と言い切った。業種を問わず「売り上げが減った分」を補償する「粗利補償」を行うべきだという。