
入れ歯をつけたまま寝る。そんな何気ない習慣が、実は老化を加速させ、命を脅かす肺炎を引き起こす原因になる。口の中に潜む菌が、なぜ全身に悪影響を及ぼすのか?正しい口内ケアを知らないと、あなたもリスクを抱えることになる。※本稿は、水口俊介『からだの「衰え」は口から 歯と健康の科学 健康寿命を左右する口のケアの最前線』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
歯が抜けたところを
放置するとどうなるか?
そもそも歯を1本失ったとき、なぜそこに義歯を入れる必要があるのでしょうか。
図6-6は、ほとんどすべての歯学部学生が義歯に関する授業で使っている図です。

ここでは、下の左から2番目の歯(下顎第1大臼歯、いわゆる6歳臼歯)が抜けて、その後に義歯を入れることなく放置していた状態を表しています。
どうなるかというと、各歯の矢印が示しているように、両隣の歯が倒れかかってきて、さらには、かみ合わせ相手の上顎の第1大臼歯が下に突出してきてしまいます。つまり、失った歯の上下左右に隣接する歯が、空いてしまったスペースを埋めるかのように移動してくるのです。
この図は、28本の中で最も早くなくなると考えられている下顎第1大臼歯(平均53歳くらい)の例ですが、他の歯が失われた場合でも似たような動きが見られます。