日米首脳会談でバイデン米大統領が
菅首相へ伝えたこと
――イギリスで開催されていたG7サミットが6月13日に閉幕しました。中国の海洋進出などに「深刻な懸念」を表明し、中国を強くけん制するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性に初めて言及しました。
台湾の問題はとても大きい。台湾有事というのは、つまりは日本有事でもある。しかし、バイデン氏は対中政策で何をしたいのか今のところよくわからない。外務省幹部の話によれば、今年4月の日米首脳会談でバイデン氏は菅さん(菅義偉首相)に、「対中政策で日本が何ができるか、よく考えてくれ」と伝えたという。僕は近々、菅首相と会う予定だが、このあたりを議論するつもりだ。
――田原さんは、日米首脳会談の前にも菅首相とお会いしていますね。菅首相とはいつから親交があるのでしょうか?
小泉さん(小泉純一郎元首相)が郵政民営化を進めていた時、総務相兼郵政民営化担当相が竹中平蔵さん。それを補佐していたのが、当時、総務副大臣だった菅さんで、その頃から知っている。
――当時はどのような印象でしたか?
2005年の郵政民営化に関しては、自民党の国会議員の多くが反対し、自民党が分裂状態に陥った。これを説得して回ったのが菅さん。調整能力が抜きんでていた。総務省の内部の管理でも腕力を発揮した。だから安倍さん(安倍晋三前首相)は、菅さんを官房長官に抜てきした。
ちなみに、郵政民営化反対派の急先鋒だった小林興起衆議院議員(当時)の刺客として、小林氏の地元・東京10区から立候補したのが小池百合子氏。東京10区は小林氏の地元だったが、小池氏が勝利し、小池氏は東京における基盤を築いた。だから小池氏は小泉さんにとても気に入られた。
郵政民営化に最後まで反対したのが、郵政相の経験があった野田聖子氏。郵政民営化法案に反対票を投じたため、2005年9月の衆議院議員総選挙では、自民党の公認を得られなかった。しかし、刺客の佐藤ゆかり氏に勝利して当選し、名を上げた。その後、自民党からの離党勧告で離党したが、安倍さんの意向もあってのちに復党している。
総裁と衆院議員の任期が満了へ
注目は次期幹事長のポスト
――9月末で菅首相の総裁任期が満了します。また、衆院議員の任期が10月21日で満了となります。菅首相に対する有力な対抗馬がいない中、「幹事長が誰になるか?」に注目が集まっています。二階俊博幹事長が続役か、「3A」と呼ばれる、安倍前首相、麻生太郎元首相、甘利明税調会長の息がかかった人になるのか、幹事長ポストの争奪が始まっているようです。
当然、菅さんが再選するでしょう。ほかに誰も出てこないからね。安倍さんも、総裁選前に衆院の解散総選挙が行われれば「総裁選は無投票再選が望ましい」とメディアで言っていた。安倍さんは甘利さんを幹事長にしたがっているのではないかという声もある。
東京オリンピック・パラリンピックが「失敗」すれば、菅さんは退陣だ。それは彼も覚悟している。ただ、野党に政権交代することはないだろう。麻生内閣の時と違って、野党の支持率は一向に上がっていないからね。今の野党はだらしない。先日の党首討論でも追及が甘かった。「緊急事態宣言をなぜ解除するんだ!」「根拠はなんだ!」と枝野さん(立憲民主党の枝野幸男代表)はもっと追及するべきだった。
いずれにせよ、東京オリンピック・パラリンピックの開催が近づき、インド株など変異株への対応をどうするか、まずはこれを乗り越えなければならない。国民が今、一番心配しているのはそこだろう。