徹底的な落下テストで
破損原因を追及

「アイキララ」という「目の下の悩み」のためのクリームは、注射器に似た形の容器に入っており、後部を押してクリームを出す。

 ところが数人のお客様から、

「突然、クリームが出なくなった」

 というクレームが入った。

 ヒアリングすると、「使っていると、途中から出なくなった」「落としてしまってから出なくなった」とのことで「最初から出なかったわけではない」という点が共通していた。

「落ちたときに、どこかの部品が外れたり壊れたりしたのかもしれない」

 お客様から不具合が生じた商品を送ってもらい、調べた。

 容器を分解してみると、内側のネジが外れており、それでクリームが押し出せなくなっていた。

 OEMの容器メーカーに問い合わせたが、「そんな話は今まで聞いたことがない」と言う。

 自分たちで調べるしかない。

 ネジが外れた原因を探るため、商品部の社員が会議室に集まり、テストした。

 最初は空の容器をいろいろな方法で落とした。

 容器を分解して、どの部品がどう動くのかを確認しながら、高さを変えて落下させた。

 お客様の使用状況を想像しながら、マット、フローリング、コンクリートなど、床面の質を変えて落としてみた。

 だが、いずれの場合もネジは外れない。

「容器が空っぽだからじゃないですか」

 そこで水を入れて落とした。それでもネジは外れなかった。

「クリームの入った実物を落としてみましょう」

 しかし、ネジは外れなかった。

 角度を変えて落とした。

「あっ!」

 ネジが外れた。

 クリームの入った状態で床面に垂直に落ちたときに、衝撃が容器全体に伝わり、脂分でネジが回転して外れた。

 会議室に「わっ」と歓声が上がった。

 容器メーカーは空の状態でテストする。

 だが、商品には液体、クリーム、ジェルなどが入り、それぞれ成分は異なる。

 商品は完成形でテストしないと意味がないと実感した。

 容器メーカーは「おたく以外からそのような報告は受けていない」と言ったが、それはOEM業界の実態を反映した言葉だと後からわかった。

 OEMメーカーのクライアントに、当社のようなロングセラー主義の会社は少ない。

 多くの会社は、ブームを察知して商品をつくり、それを売り切って終わり。

 ヒットするケースもあるが、まったく売れずに在庫を抱えるケースもある。

 基本的には一回つくって終わり。再生産しないと決めれば、仮にクレームが数件きても、OEMメーカーには言わないだろう。

 だが、私たちは同じ商品を長く売るため、問題があれば改善していく。

 当社の商品を受託していたOEMメーカーから転職してきた人が何人かいる。

 その人たちがこんなことを言った。

「OEMの現場では『つくって納品して終わり』が普通でした。

『北の達人』からは何回も同じ商品の発注がきて、不思議に思っていました。

 自分のつくった商品が全国のお客様に愛されていることがわかり、転職を決意しました」