大手塾で算数講師の経験を積んだ後、算数専門のプロ家庭教師として約20年間、2000人以上のお子さんを指導してきた中学受験専門のカリスマ家庭教師・安浪京子先生は、その経験から「ノートをひと目見ると、その子の学力がわかる」と言います。
ノートとは、思考を整理して、それを自分や相手(採点者)に伝える練習をするための基本の道具。しかし、子どもはもちろんのこと、保護者ですら、ノートの価値を低く見積もっている方が多いそう。6年生でもノートの書き方を知らない子は多く、その状態のまま、受験勉強に励んで伸び悩んでいる子は多いのです。
本連載では、「ノートの正しい書き方を知らずして、学力は上がらない」と断言する安浪先生が、指導の中で必ず教えるノート術を初公開した話題の新刊「中学受験 必勝ノート術」の中から、一部を抜粋し、ご紹介していきます。
ノートの書き方を教えたら、あっという間に50点アップ!
カウンセリングでA君と出会ったのは5年生の夏前。最初に“現状”を知るために模試の結果を見せてもらうと、偏差値は55前後ありました。次いで見せてもらったのは「問題用紙」です。「どう解いて(書いて)いるか」を確認し、模試の結果と子どもの学力に整合性があるかどうかを判断します。
A君の問題用紙は、落書きと見まごうメモ書きで、計算問題も最初から間違えていました。このままでは成績が下がっていくのが自明でした。
「“速さ”が苦手なので教えてください」と言われましたが、最初にしたのは、算数の日々の計算ノートの使い方を教えることです。
「ノートを区切って、式と筆算をわけようね。問題番号を書いて、問題は必ず写そうね」「字のサイズをそろえて書いてごらん。消しゴムはちゃんと使おう」といったことを、A君が自分でできるようになるまで30分かけて教えました。
書きあげたノートは今までと別人のよう。ご両親も「ウチの子、こんなにきれいに書けるんですね!」と驚いていました。
その後、模試で間違えた問題をピックアップし、「今みたいな書き方で解いてごらん」と促すと、50点アップ! 喜ぶA君に「模試や入試でいきなり式を書けるようにはならないよ。毎日、ちゃんとノートの罫線に沿って、きちんと式を書けば合格できるよ!」と伝えました。
ノートが書けるようになると偏差値が10アップすることも!
それからA君は、苦手と言っていた“速さ”も線分図の書き方をきちんとマスターし、次の模試では偏差値10アップ! その後、第一志望に見事合格しました。
中学3年生の時に数学のノートを見せてもらう機会があり、理路整然としたノートに成長を感じました。ノートは、子どもの学力の「成長の記録」にもなるのです。