あまりのかっこよさに衝撃を受けて興味をひかれ、ウェブページをどんどん読み進んでいくと、私の知らなかった現実を知ることになりました。

 世界では、3秒に1人の子どもたちが貧困のために亡くなっているというのです。動画で彼らが指を鳴らす間隔が3秒に1度なのは、それを意味していました。ウェブページには、「これは“Make Poverty History”のキャンペーンフィルムである」というようなことが書かれていました。調べてみるとMake Poverty History とは「貧困を過去のものにしよう」という意味でした。

 彼らが腕につけていた白いリストバンドは、その意思表示。つまり、フィルムに登場していたセレブたちのように私たちも白いリストバンドをつけることで、「貧困をなくしたい」という意思を世の中に表明していこうという運動なのです。

伝説のライブ「ライヴ・エイド」のチャリティ金の行方

 少し、時間をさかのぼります。サニーサイドアップを創業した1985年、ロックミュージシャンであるボブ・ゲルドフの呼びかけによって、「ライヴ・エイド」というアフリカ難民救済のためのチャリティ・コンサートが、ロンドンとフィラデルフィアで同時開催されました。

「ライヴ・エイド」には、U2、クイーン、ポール・マッカートニー、エルトン・ジョン、マドンナといった超一流アーティストたちが無料出演しました。最近大ヒットした映画『ボヘミアン・ラプソディ』のクライマックス・シーンのあのライブです。

 また、キャンペーンソングとしてマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーが作詞・作曲した『ウィ・アー・ザ・ワールド(We Are The World)』という曲も世界的に大ヒットしました。

「ライヴ・エイド」は20世紀でもっとも成功したチャリティ・コンサートと言われ、集まった寄付金は1億2500万ドル(当時のドル円レートで、約280億円)に達しました。

 ところが、日本円にして280億円にもなるチャリティ金でしたが、それでもアフリカ諸国が先進国に返済する債務の、たった1週間分の利息に過ぎませんでした。貧困を生んでいる仕組みは、寄付だけではどうにもならない、焼け石に水であることが、皮肉にもわかってしまったのです。