心因性の頭痛ですね、ありますよ。マスクをしている間は誰しも緊張しますよね。例えば僕も出がけにマスクを忘れたことに気付いたら、わざわざ家まで取りに戻ります。コロナに感染するのが怖いだけでなく、社会の目が気になる。今、マスクをしていないと犯罪者みたいに見られがちですよね。マスクはうっとうしくてつらいけど、皆我慢して、緊張してマスクをしているわけです。
それで家に帰ってマスクを外すと、ああ今日も大丈夫だったとホッとし、安心しますよね。すると副交感神経が一気に優位になり、脳の血管が広がって、頭痛がガンッと起こるという人は少なくありませんし、やはり片頭痛の方にこのような頭痛が多いです。
――マスクをしている最中ならともかく、外した途端に頭が痛くなると心配になりますよね。
そうですね、僕もあちこちで質問されます。でも、マスクを外した途端に緊張が解けて、一気に副交感神経が優位になって血管が広がり、頭痛が起こるんですよと説明すると納得してもらえます。
片頭痛患者はもともと
三叉神経が過敏でマスクに弱い
――先生の頭痛外来でも、マスク頭痛を訴える患者さんは多いですか?
もともと片頭痛の患者さんがマスクの着用によって症状が悪化し、マスク頭痛を起こした症例は増えています。片頭痛持ちは日本に約840万人いるといわれ、男女比は4対1で大多数が女性です。
片頭痛の患者さんには、三叉神経が敏感という特徴があるのですが、片頭痛が起きる予兆として「マスクが気になって仕方ない」と訴えてこられるケースも相次いでいます。マスクのひもとかが顔に当たって皮膚がピリピリするのは、アロデニアといって、三叉神経が過敏になっているサインなので、放っておくと強い片頭痛に襲われる可能性が高く、要注意です。
片頭痛の患者さんには、サングラスの縁が顔に当たるのが嫌でかけられない人も多いです。サングラスは片頭痛の有効な予防手段なのに、アロデニアのせいでかけられないのは気の毒です。