視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。
検査の精度が99.99%でも
「ほぼ確実」ではない!?
次の数字に関する問題を考えてみてもらいたい。なお、以下のケースはあくまで架空のものであり、現実の新型コロナウイルスとは関係ない。
あるウイルス感染症の検査を受けたとする。その検査の精度は99.99%で、リスクの少ない(感染の危険がある行動をほとんどしていない)人々1万人を対象としたものだった。だが、あなたの結果は残念ながら「陽性」だった。この場合、あなたがウイルスに感染している可能性はどのくらいなのだろうか。
ほとんどの人は、「ほぼ確実に感染症にかかっている」と思うのではないだろうか。なるほど、99.99%というのは、かなり高い精度だ。しかし、それはイメージにすぎない。ある条件のもとでは「ほぼ半々」、50%なのだ。
「ベイズの定理」を知っている人なら、きっと「ほぼ確実」とは思わなかっただろう。たとえば、リスクの少ない人々の感染率がおよそ「1万人に1人」だったとする。その場合、1万人を対象とした検査ならば、1人が真の陽性だ。
しかしながら、検査の精度は100%ではない。なので、残りの9999人からもう1人、陽性結果が出る。つまり、このケースの検査に対して、陽性結果は「2人」になる。だが、そのうち1人は検査のエラーで「偽陽性」である。したがって、陽性結果が出たあなたが、本当に感染症にかかっている可能性は、50%なのだ。