「落ちこぼれ」のやる気を高める方法
営業担当者のうち、成績下位者のグループは通常、多様なメンバーで構成されている。訓練を必要とする新入社員もいれば、自己満足しているベテラン社員もいる。また単純に、同僚と比べて才能や意欲が劣る者もいる。
これまで我々が調べてきた、ほとんどの落ちこぼれグループには、適切なインセンティブを設ければ成績が向上できるメンバーがいた。以下に挙げる戦略(アメとムチの両方がある)は、そうした「よい」落ちこぼれに成績曲線の上方に移行する意欲を持たせるうえで有効である。
ボーナスによるペースづくり
本稿の筆者スティーンバーグは現在、最もありふれたアメである「ボーナス」の研究を進めている。この研究は、フォーチュン500社に入る、ある事務用耐久財を扱う企業の現場データに基づき、花形、中間層、落ちこぼれの営業担当者たちがさまざまな報酬制度下で示す行動を個別にモデル化するものである。
この研究により、落ちこぼれのインセンティブのうち、年度ボーナスだけを残して4半期ボーナスをやめると、その成績(売上実績で測定)が全体的に約10%下がることが判明した。
これと同じ変更を行っても、中間層と花形の成績は、それぞれ4%と2%しか下がらない。4半期ボーナスを導入する弊害は何もないので、それを用いれば、ほかのグループの足を引っ張ることなく、落ちこぼれが利益貢献できるようになる。
ペース・メーカーとなる目標を設ければ成績下位者の行動が変化することは、ほかの分野でも知られている。たとえば、教育分野の研究でも、学生に同じようなパターンが見られる。
意志の弱い学生が落ちこぼれるのを防ぐには、学期を通じて定期的に小テストを実施する必要がある。そのような仕組みがないと、期末試験の成績が悪くなる。対照的に、意志の強い学生は花形と同じように、自主的に努力するので、小刻みに目標を設ける必要性が少ない。