自然な組織内の圧力

 新人営業担当者を育てる優れた仕組みがあると、おのずと成績下位者に組織内の圧力が働くという話を、マネジャーはよく口にする。これは、アメリカン・フットボールで控えのクォーターバックが先発メンバーに与える圧力と同じであり、通常は「控え選手」効果と呼ばれている。

 我々が現在、手がけている研究では、控え要員が既存の営業チームの成績に与える影響を測定している。先進的な計量経済学の手法を使って、控え要員がいる地域といない地域について比較するのである。

 これまでに、控え要員がいる地域では、控えがいない地域よりも、営業担当者の成績が5%ほどよいことがわかった。なかでも、成績が最も著しく改善するのは落ちこぼれグループである。長期的に見ると、全体での売上げの増加は、控え要員に関連する追加コストを優に上回る。

 落ちこぼれの人数が不釣り合いに多い会社は、たいてい、営業マネジャーが移行期の難しさと対峙するのを避けてきた結果としてそうなっている。マネジャーは多くの場合、慢性的な成績下位者を再教育すると、販売地域に空白が生じるというトレードオフを強いられる。控え要員を雇えば、こうした移行が円滑に進むようになる。

 制度による組織内の圧力

 落ちこぼれに組織内の圧力を与えるプログラムを実行する場合、慎重を期すべきである。有効なプログラムは徹底した予備テストから生まれ、企業文化の影響も受けやすい。うまく設計すれば、落ちこぼれのチームに対する責任感が高まり、花形も落ちこぼれを救済しようとする気になる。適切なプログラムは、従業員のやる気を削ぐことはない。

 我々が調べたある企業では時々、(通常のように上位からではなく)落ちこぼれから花形へという順番で販売実績を発表することで、落ちこぼれの成績を詳細に調査している。

 別の企業では、営業担当者1人ひとりを「先発」「控え」「退場」の3タイプに分類し、営業部門の休憩室に正式に張り出している。

 このように公開するのはやや極端だが、競争と透明性を重視する同社の文化の下では有効なようである。勝てばスポーツ・イベントのコート・サイド席や〈ポルシェ〉のリースなど派手なごほうびで祝福され、負ければ打ちのめされる。