「中間層」のやる気を高める方法
皮肉なことに、中間層を無視しているのも同然なインセンティブ制度が多い。このグループが見落とされがちなのは、なぜだろうか。
その一因は、営業マネジャーが彼らに共感しないことにある。多くの企業は、もともと成績抜群だった営業担当者を営業マネジャーに任命するので、マネジャーは現役のトップ営業マンに必要以上に注目を向ける。その結果、中間層の営業担当者が往々にして昇進から取り残され、年次営業会議でも蚊帳の外に置かれる。
だが、これは企業にとって得策ではない。中間層は通常、多数派を占めており、彼らを巻き込まなければ企業は目標を達成できない。ここで、中間層の気持ちをつなぎ止めるのに有効な戦略をいくつか紹介しよう。
段階的目標
本稿の筆者アハーンが全国展開している金融サービス企業と組んで実施したプロジェクトから、段階的目標は中間層の意欲を高める効果があることがわかった。
その企業では、営業担当者の大多数が中間層のカテゴリーに属していた。彼らは景気が悪くても、必ずといってよいほどノルマを達成する方法を見つけ出したが、好況時にノルマを大きく上回ることはほとんどなかった。
そこで、この層を刺激して底上げを図るために、段階的目標が試験的に導入された。
第1段階の目標は、過去にその企業の営業担当者の大半が達成した水準を設定した。第2段階は達成者の割合がより少ない水準とし、第3段階は成績優秀者のみが達成した水準を設定した。
次に、すべての営業担当者を2つのグループに分け、第1グループには第1の目標と第3の目標を、第2グループには3つの目標をすべて提示した。これは、段階的目標が踏み石の役割を果たし、中間層が成績曲線を上昇させるよう導くだろう、という仮説に基づいていた。
実際、この段階構造の効果は絶大だった。中間層は3段階の目標を達成しようと奮闘し、2段階しか目標を提示しなかったグループの販売実績を大幅に上回った。これとは対照的に、花形と落ちこぼれは、段階的目標が意欲向上につながらなかった。両セグメントでは、販売成績に大きな違いは見られなかった。
このような結果から、中間層は段階が増えれば、ますます努力すると推定できる。一方、踏み石の数が増しても、花形パフォーマーが影響を受けないのはおそらく、目標が何段階であろうと、最高段階を達成できると考えるからだろう。また、落ちこぼれ層が無関心なのは、概して、第1段階の目標を目指し、それを達成すれば満足するからだと思われる。