多様な価値観を反映させた表彰制度
我々2人が現在取り組んでいる研究プロジェクトでは、販売コンテストの賞品構成をどのようにすれば、中間層の意欲を引き出せるかを調べている。販売コンテストの問題は、いつも花形が勝ってしまう点にある。中間層はそれがわかっているので、もっと努力しようという気持ちにならない。
過去の成績に基づいてコンテストの参加者にハンデを与えてみると、問題がいくぶん緩和される。しかし、これはこれで問題がある。花形が下位の賞に甘んじたり、まったく賞をもらえなかったりするのに、中間層や落ちこぼれが上位の賞を獲得することが、はたして公平といえるだろうか。
理想的には、営業担当役員が花形も中間層も満足させるようなコンテストを設計するのがよいだろう。これは簡単なことではないが、人間には社会階層上の自分のポジションに適応する性質が備わっているので、不可能な話ではない。
カギとなるのは、下位の賞として、何らかの点で上位の賞と同等か、優れているようにも思えるもの(現金以外)を贈ることである。
たとえば、上位の賞として名門ゴルフ・コースへの旅行を、下位の賞として近場への家族旅行を贈るとしよう。家族旅行の市場価値はゴルフ旅行より低い。だが、中間層は自分の好みを変えて、成績曲線の中位というポジションに順応することができる。つまり、「最近はゴルフ三昧だから、いまの自分に大切なのは家族と一緒に過ごすことだ」と思うことで、自分がもらう賞を正当化することができる。
賞金がもらえるコンテストより、この種のコンテストに中間層が真剣に挑み、優れた成績を出している例は枚挙にいとまがない。さらに、中間層が頑張ったからといって、花形や落ちこぼれの意欲が削がれることもない。
しかし、下位の成績に贈られる賞が、単に上位の賞のグレードを落としただけであれば、この方法はうまくいかない。中間層は、名門ゴルフ・コースでの1ラウンドより、月並みなコースでの1ラウンドのほうが魅力的だとはけっして思わないからである。
下位の賞には、上位の賞にはない性質を持たせなければならない。この例で言えば、近場の旅行が家族にとって魅力的なので、中間層は意欲を落とさずにコンテストに取り組めた。
我々はまた、落ちこぼれの成績向上を狙ったインセンティブを設ければ、中間層のなかの下位層の意欲が高まることも目にしてきた。こうしたことが起こるのは、彼らがさらに下のカテゴリーに落ちるのを恐れるからである。ここで、このグループに有効なインセンティブを紹介していこう。