「花形」のやる気を高める方法
企業の成績曲線上で最も効率性が高い位置を占めるのが花形である以上、彼らを優遇するインセンティブ制度を設けるべきである。ところが、販売コミッション率に上限を設けたり、勝者総取り方式のインセンティブを主体としたりする企業が多い。それはコスト管理が主な理由であり、おおむね財務部門が主導している。
だが、こうしたやり方は合理的だろうか。答えは簡単で、「ノー」である。このようなコスト管理手段を強いる経営幹部は、ニューヨーク市のタクシー運転手を対象とした調査でコリン・キャメラーをはじめとする研究者が発見したのと同じような、不合理な行動を促している。
キャメラーは、タクシーを利用したい人が増えると、タクシー運転手の労働時間が延びるか(供給の法則)、それとも、運転手は一定の数に達したところでその日の仕事を終えるか(売上目標の設定)について調査した。
その結果は、僅差どころではなかった。目標に到達した時点で、仕事を切り上げる運転手が圧倒的多数を占めていたのである。
やる気満々の営業担当者に対してコミッションの上限を設ければ、花形に売るのをやめるよう促すことになる。これはまさに、1時間当たりの稼ぎが最大となる雨の日に、タクシー運転手が早仕舞いをするようなものだ。需要が旺盛な時期に、花形がさらに熱心に働けば、企業の業績は向上する。
販売コミッションの上限撤廃
サンジョグ・ミスラとハリケシュ・ネールが実施した最新の研究は、営業担当者の報酬に上限を設けた場合の影響を取り上げている。2人が調べたのは、アメリカの大手コンタクト・レンズ・メーカーの報酬制度である。
この企業は営業担当者の成績がノルマの上限に達したところで、販売コミッションの支払いをやめていた。そのため、営業担当者は売上高を必ずこの上限以内に抑えていた。そこで、報酬制度に上限を取り除くなどの変更を加えたところ、営業担当者は意欲を持ち続け、売上高が約9%伸びた。