ノルマ超過分の割増コミッション
ここで言う割増コミッションとは、ノルマ達成後、さらに売れた分に適用される割高のコミッション率のことである。たとえば、ノルマに到達するまでは、通常のコミッション率に基づいて売上高1ドル当たり1セントが営業担当者に支払われるが、ノルマを超えた分は一律、売上高1ドルにつき2セントが支払われる。ノルマ超過分に対する割増インセンティブの有効性は、本稿の筆者スティーンバーグの事務用品会社に関する調査によって実証されている。
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この調査によれば、このようなインセンティブを報酬制度から除くと、花形の売上高が約17%減ると考えられる(図表2「営業成績別の報酬制度」を参照)。ノルマ超過分に割増コミッション率を設定すると、顧客の購買意欲が往々にして最も高い第4 4半期に、花形に販売努力を続けさせるのに有効である。
勝者を複数にする仕組み
本稿の筆者アハーンの研究から、販売コンテストの勝者を複数にすると、勝者総取り方式で賞を与えるコンテストよりも販売意欲と成績が向上することが明らかになっている。また、その共同研究者の1人、ノア・リムはさらに研究を進め、花形の比率が増えるほど、賞を(減らすのではなく)増やすべきであることを実証した。
この発見に従えば、経営幹部は営業チーム内の花形の人数と少なくとも同数の賞を用意すべきである。その理由は興味深い。コンテストで贈られる賞の数が増えると、花形に代わって落ちこぼれや中間層が賞を獲る可能性が高まり、それによって花形も労働意欲が高まるのである。
このような結果から、もしトップ・クラスの営業担当者向けの支出を抑えようとすれば、会社の業績に悪影響が及ぶことがわかる。