こんな説明で、いくらできた年やブドウの品種を並べられても、お客さまの心は動きません。正直、「へえ、そうなんだ。だから何?」です。せいぜい、「まあ、少しは美味しいのかな」って思ってもらえる程度。
しかし、この1本のワインについて、こう説明されたらどうでしょうか?
「このワインは、フランスからカリフォルニアに渡ったひとりの醸造家が、愛する娘のために造りました。苦労してブドウ畑を作り、やっとアメリカでのワイン造りに成功したその醸造家は、娘が生まれた年に、たくさんの畑のなかから、特にできのよいブドウを厳選して、このワインを仕込んだんです。ですから、このワインには、彼の一人娘の名前がつけられているんです」
こうなると、それはもう「物語」ですよね。
この説明のあとで、
「○○さんの娘さんが、もうすぐご結婚されるとうかがいました。このワインをぜひ、プレゼントされてはいかがでしょう」
と言われたら、その1本のワインが、どこか特別なものに見えてきませんか?
はっきり言って、カベルネソーヴィニヨンが60パーセントとか、そんな上っ面なことは、どうでもよくなってしまいます。
これが、物語が持つパワーです。
「性能」や「価格」よりも
物語が重要
売れる営業パーソンは、自社製品の性能を語りません。
製品を作った人たちの物語を語ります。
「寝心地がいいフトンです」より、「創業者は20年かけて世界中の羽毛を試して、やっとこの羽毛の配合にたどり着いたんです」と言えば、それが「物語」です。
「乗り心地が最高にいい車です」より、「この車で、週末に家族でピクニックに出かけてみてください。最高ですよ」と言えば、そこには「家族の物語」が生まれます。