できる人は、「物語」や「体験」が持つ力を知っています。

 スペック以上に、相手の心に響くものを知っているのです。

数字ひとつから
血が通った「ストーリー」が

 目の前にあるどんな物事にも、そこに至るまでの「物語」が必ずあります。できる人は、ひとつの数字にも血を通わせて、そこにある「物語」を見つけ出してきます。

 数字に血を通わせられない人には、3という数字は、ただの3でしかありません。

 たとえば、営業部員から、「社員研修に関心のある見込み客が3件あります」という報告があったとき。

「その3件の会社の、それぞれの担当者の名前を教えてくれる?」と尋ねると、たいていの営業部員はそこまでは把握しています。

 ところが、「お相手の担当者は、どんな社員研修をお望みなの? 会社の誰をどんなふうに成長させたいと思っているの?」と尋ねると、「そこまでは聞いていませんでした」と。3社の担当者それぞれが求めている社員研修の、背後にある「物語」に目が向いていないのです。

 前回説明したように、ここで一歩踏みこんで担当者に質問すれば、「営業のエース候補なのに、最近行き詰まっている鈴木と佐藤の2人を元気にしたい」と、ニーズが分解され浮かび上がってきます。3という数字に、血が通った物語が見えてきます。

 血の通った物語がわかれば、

「研修の費用は40万円ですが、鈴木さんと佐藤さんの2人を元気にできたら、1人20万円の投資ですね。2人がこれから10年間、目を輝かせて仕事をできるようになるとしたら、この20万円は高いですか?」

 と、より具体的な提案ができるようになる。

 これが、「できる人は、数字ひとつから、相手の事情の背後にある物語に思いをめぐらし、血の通った提案をする」ということなのです。