米国の外交政策を巡る政治は、現代の平常状態に回帰しつつある。それを物語るのが、バイデン政権が最近下した二つの決断とそれに対する両党の反応だ。ドナルド・トランプ前大統領の特異性と民主党の反対姿勢は、米二大政党の伝統的な立場をやや脱線させ、同盟国と敵国を同様に混乱させた。だが今、共和党と民主党は基本的に以前の状態に戻りつつある。米政府は先週、中国によるマイクロソフトの電子メールシステムへのハッキングについて、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)加盟国が非難する声明を発表するよう指揮した。しかし、それらの声明は一様に中国政府の行動を批判するものではなかった。外交官が言うところの「かしこまった文書」にすぎなかった。さらに重要なのは、少なくとも公には、これまでのところ報復措置が取られていないことだ。(最近のロシアの組織によるサイバー攻撃の後とは異なり)制裁も科されず、サイバー面での対応も取られなかった。ホワイトハウスの報道官は「われわれは躊躇(ちゅうちょ)しない」と発言したが、その言葉は明らかに偽りだった。もちろん彼らは躊躇し、中国政府はそれを分かっていた。
【寄稿】米外交政策、良くも悪くも平常化=ボルトン氏
共和党が民主党よりも対中ロ政策で強硬化、トランプ時代は終結
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