高市財政の“異次元緩和”と共通する危うさ、「期待」醸成だけで持続的成長は実現できるのか衆院予算委員会で答弁に臨む高市早苗首相=3月9日 Photo:SANKEI

「緊縮財政からの転換」は事実でない
黒田異次元緩和と共通するレトリック

 高市政権の経済政策では「責任ある積極財政」に注目が集まるが、これには二つの批判がある。

 第一は、デフレではない今、財政を拡張すればインフレを加速させるという批判だ。第二に、急務である財政再建に逆行するというものだ。

 こうした批判が出てくるのは、高市首相の言い方による面もあるだろう。高市首相は2月20日の国会での施政方針演説で、「長年続いてきた過度の緊縮志向、未来への投資不足への流れを断ち切る」と述べた。

 だがまず、「長年続いてきた過度の緊縮志向」は事実ではない。むしろその逆で、基礎的財政収支(プライマリーバランス)は約30年にわたり黒字になったことがない。長年の赤字の積み重ねにより、政府債務のGDP(国内総生産)に対する比率は他国に類を見ない230%に達している(IMFベース)。

 それを「過度の緊縮志向」と言うなら、日本の財政事情を正しく理解していないと思われても仕方がない。

「流れを断ち切る」というのも、非連続な財政拡張を連想させる強い言い方だ。

 従来の政策を“大転換”したかのようなこうしたロジックは、2013年に日本銀行の黒田東彦総裁(当時)が「これまでと次元の異なる金融緩和を行う」と述べて、レジームチェンジを演出したのに似ている。

 異次元の緩和策を進めると日銀が宣言することで、従来のデフレ心理を払拭し、2年という短期間で2%の物価上昇を定着させる狙いだった。

 高市財政も「期待」に働きかける要素を感じさせるが、持続的な成長は簡単に実現できるものではない。

 相対的に恵まれた国民への負担を求めることなくして、成長につながり得る大胆な財政支出と、財政への市場の信認確保を両立できるのか、このままでは「期待」どころか「不安」の方が大きい。