「で、NTTドコモから、iPhoneは出るんですか?」
この仕事をやっていて、結局一番多い質問であるように思う。KDDIからiPhoneが投入され、状況が変わった今日においても、やはり時折この問いかけをいただく。
本件については大手メディアも常にニュースを追いかけ、そしてことごとく誤報を繰り返してきた。そんな、メディアとしての信頼性が失墜するリスクを負ってでもなお、本件を取り上げるのは、それだけ耳目を集める話題であることの裏返しでもある。
そんな「ドコモiPhone」の噂が、ここにきて業界内でまたぞろ広がっている。NTTドコモからの番号ポータビリティによる顧客流出が大きく注目される中、今度こそ起死回生の一手を打つという、希望的観測にも近い見立てである。
その可能性そのものについては、私はそれを論じるつもりもないし、その立場にもない。しかし本件を通じて、NTTドコモが抱えている課題が、いくつか見えてくる。そしてそれは、単にiPhoneを導入すれば解決するというような単純な話では、どうやらなさそうだ。
ドコモLTEの最大の失敗は
マーケティング?
NTTドコモの不調が伝えられて久しい。KDDIがiPhoneを投入したあたりから、現場での勢いに差が見えるという論調が目立ち始めた。そして昨冬の通信インフラの大規模障害で、それまでの「つながるドコモ」のブランドさえも、かげりはじめた。
もちろん、インフラが逼迫する状況は、NTTドコモに限った話ではない。他の通信事業者も似たり寄ったりではある。本連載でも幾度となく触れているが、フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)を前提としたインフラでは、スマートフォンのトラフィックは、質量ともに耐え難いという、根本的な構造問題である。
こうした事態を打開すべく、NTTドコモはモバイルブロードバンドに適した新たな通信規格のLTEの導入を、他の事業者に先駆けて進めた。その結果、LTEの利用環境を有する利用者は、サービスエリアで利用する限り、しばらくの間は快適な通信環境を満喫できた。