講演する日本銀行の植田和男総裁日本銀行の植田和男総裁は入院のため6月の金融政策決定会合を欠席すると発表されたが、利上げの決定は変わらないだろう Photo:JIJI

日本銀行は予想通り6月に利上げする見込みだ。原油価格は日銀の4月想定を上回っており、米国の利上げ観測の台頭で円安にも歯止めがかかりにくいため、利上げ後も「ビハインド・ザ・カーブ」のリスクは濃厚に残る。2026年内の再利上げは不可避だろう。一方、国債買い入れのさらなる減額はやめ、市場を安心させるのではないか。(SOMPOインスティチュート・プラス エグゼクティブ・エコノミスト 亀田制作)

講演で利上げを“予告”した植田総裁
入院で会合欠席も決定は変わらない

 筆者はイラン情勢の緊迫化以降、日本銀行の利上げは6月の可能性が最も高いと予想してきたが、現実にその公算が大きくなっている(『日銀「4月は様子見」でも迫るタイムリミット、利上げ路線“堅持”示す4つの新情報』参照)。

 植田和男総裁が6月3日の講演で利上げを強く示唆するキーフレーズ(「利上げの是非についてしっかりと議論する」)を用いたことで、金融市場は15、16日の金融政策決定会合での政策金利の引き上げ(0.75%→1%)をほぼ完全に織り込んだ。

 そうした中で10日、植田総裁が入院のため会合を欠席するとのニュースが入った。植田総裁は決定会合で投票せず、書面で意見表明のみ行うという異例の事態となる見込みだが、利上げの決定は変わらないだろう。市場予想にも変化はない。

 植田総裁の講演での発言録を読むと、景気面では、家計のマインド慎重化にもかかわらず実際の個人消費は落ち込んでいないことなど、ポジティブな材料を挙げている。一方、物価については、企業物価の上昇率が高いことなどを指摘しつつ、下振れリスクより上振れリスクの方が大きく、早く表れる可能性があると述べている。

 さらに、追加利上げに踏み切るかどうかの重要な判断ポイントの一つとしてきた「広義の金融環境」については、(1)企業のROA(総資産利益率)と比べ金利コストは十分に低い、(2)企業の前向きな投資を阻害するとすれば、調達金利の上昇ではなく人手不足や資材高騰である―と語っている。既往の利上げは景気の足かせになっていないということだ。

 このように3日の総裁講演は、上述したキーフレーズの使用だけでなく、内容的にも6月利上げを事実上予告したものと言えよう。