性暴力に理解ある社会のために

 男性の性被害についての国内での継続的な調査は、他には6年おきに行われている「青少年の性行動全国調査報告」(日本性教育協会)がある。

 これによれば、たとえば、性的行為を強要された経験があると答えた男子大学生の割合は、2005年・2011年・2017年の調査で、それぞれ3.2%、2.4%、1.4%。同じく男子大学生の痴漢被害の経験率は、6.1%、6.4%、2.5%。

 性別、年代にかかわらず性被害経験率は全体的に減少傾向にあるが(たとえば同調査によれば女子大学生の痴漢被害経験率は1999年には56.2%→2017年には24.0%)、警察に行くことのできる被害者が増えれば、男女ともに認知件数はむしろ増えるだろう。

「痴漢」と呼ばれる犯罪の多くは各都道府県の迷惑防止条例によって裁かれるが、『痴漢とはなにか 被害と冤罪をめぐる社会学』(牧野雅子/エトセトラブックス)によれば、東京では2001年まで、迷惑防止条例に該当する被害者の性別を、女性に限定するなど、ここでも男性の性被害は見過ごされていた。

 現在でも、性暴力あるいは男性の性被害に対して偏見を持つ人は男女ともにいる。その背景には、性暴力の問題が長い間隅に追いやられてきた過去、男性の性被害はその中でも見て見ぬふりをされてきた過去がある。

 ちなみに自民党内には「ワンツー議連」という「性暴力のない社会の実現を目指す議員連盟」(参照)があり、この発足時に赤澤亮正議員が語っていたことが忘れられない。同議連の活動に携わるようになってから、会合の席などで「自分も被害経験がある」と打ち明けられるようになり、女性だけでなく男性からも被害を聞いたという。

 筆者も性暴力の取材をしているため、取材時のみならずプライベートでも被害を打ち明けられることが多い。男性からも被害を聞いたことは複数回あるが、どんな相手になら被害申告しやすいかは人によって異なるため、性自認や年齢、職業などを問わず、性暴力に理解のある人が増えればいいと思っている。

 被害を打ち明ければ二次加害に遭うこともまだ多い社会の中ではあるが、理解者が増え、調査や支援も今後充実していくはずだと希望を持ちたい。