コロナの感染拡大、活動自粛による困窮、他人とコミュニケーションできないことからくる孤独感や閉塞感、SNSによる誹謗中傷やバッシングなど、私たちは、いま多くの生きづらさを感じさせる事柄に取り囲まれています。そんな中にあって、毎日を心安らかに、できるだけ快適に生きていくためには、どうすればいいのでしょうか? 発達障害(ADHD)、うつ病など、生きづらさを抱えながらも精神科医として活躍するバク先生は、ツイッターでのつぶやきが共感・絶賛され、今、人気急上昇中。そんなバク先生の初の著書『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす​生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)が8月25日に発売されます。同書の中には、生きづらさを解消するための実践的なヒントが詰め込まれています。本連載では、同書の発刊を記念してそのエッセンスをお届けします。心がスーッと軽くなる珠玉のアドバイスにお付き合いください。好評のバックナンバーはこちらからどうぞ。

発達障害(ADHD)と性の自認がないXジェンダーという2つの生きづらさPhoto: Adobe Stock

わたしの生きづらさ

 私があなたに伝えたいのは、この「擬態」を、ラクにできるようにするためのノウハウです。人間の性格や考え方(本性)はそう簡単には変わりません。

 でも、擬態なら自分の根本から変えなくてもいいのです。

 性格や考え方を変えることは難しいし、実現はほぼ不可能ですが、「周囲に自分のダメなところが目立たないようにする擬態」なら、少しは簡単に「できるかも?」と思いませんか。

 実際、私自身も、この「擬態」ができるようになってから、かなり生きるのがラクになりました。

 私には、二つの生きづらい要因があるのでそれを例に話を進めましょう。

 まず一つめはADHD(注意欠陥多動性障害)と呼ばれる発達障害があることです。

 私の場合の特徴としては、

 ・ケアレスミスが多い
 ・気が散りやすい(作業に集中しにくい)
 ・やりたいこと、興味のあることには逆に過集中という状態になる
 ・物を失くしやすい(どこかに置き忘れてくる)
 ・掃除、整理整頓が苦手
 ・時間の配分が苦手で遅刻する
 ・順序立ててスケジュールや仕事を頭の中で考えられない

 などの問題を抱えています。

 これは、脳に器質的な問題があることから起こると近年わかってきており、根性でどうにかなるものではありません。

 でも、そんなことを知らない私は、これらの問題を引き起こし続け、結果として社会生活に大きな支障を来していました。

 実際、これまでの人生を振り返れば、友達の結婚式の日を勘違いして欠席してしまったり、大学受験や国家試験に遅刻しそうになったり、受験票を持っていくのを忘れたり、いろんな人から「ふざけていい場面じゃないだろ!」「ダメ人間!」と怒られてきました。

 実際、反論の余地もないダメ人間だと思いますが、どう努力したら皆と同じように「普通」になれるのか全くわかっていませんでした。

 診断された後の現在は、きちんと薬を服用し、発達障害という自分の特徴がどこにあって、どういうクセがあるのかを常に自分自身を観察し、仕事に支障を来さないかを考え、自分なりのリマインド方法を開発して、日々「問題のない社会人」に擬態して生きています。

 また、人の顔を見分けることができない相貌失認(失顔症)とか、文字を咄嗟に鏡文字のように認識してしまったりする障害(2と5を咄嗟に間違えたり、アナログ時計の25分と35分がごちゃごちゃになったり)もあり、こちらも日常でまぁまぁ厄介です。