7月下旬、ある企業の2022年3月期第1四半期決算に注目が集まりました。医療従事者専用サイト「m3.com」を運営するエムスリーです。創業以来、右肩上がりに売り上げを伸ばし、2021年3月期には11期連続で純利益過去最高を更新しました。同社はなぜ、たゆむことなく成長を維持できるのでしょうか。ビジネスモデルの「四つの箱」からその秘訣を探ります。(グロービス ファカルティ本部テクノベートFGナレッジリーダー 八尾麻理)
全世界の医師の約半数!
600万人が登録するエムスリー
エムスリーは、医師向けに最新医学・医療情報を提供する専用サイトを核として、医療関連企業のマーケティング支援・調査・治験支援、人材紹介などを複合的に提供するメディカルプラットフォーマーです。2021年7月現在、国内では「m3.com」、海外では米国子会社傘下の「MDLinx」、中国では現地企業との合弁で「医脈通(Medlive)」など各国・地域サイトを運営しています。
日本国内では30万人(国内シェア9割)、世界中から600万人(全世界シェア5割)を超える医師が登録しており、医師会員・調査パネル数で世界最大です。近年は、英フィナンシャル・タイムズによる2020年版「パンデミック下でも繁栄する(Prospering in the pandemic)世界100社」で日本企業トップの第21位となったほか、2017年に米フォーブス誌が発表した「世界で最も革新的な成長企業(Innovative Growth Companies)」に第5位でランクインするなど、世界から注目を集める存在となっています。
同社が創業した2000年は、世界がネットビジネスを中心とする「ドットコム創業」に沸いた年でした。
玉石混交のネットビジネスで、着実に会員基盤を固め、売り上げ・利益を継続的に伸ばしてきたエムスリー。多くのドットコム企業が姿を消す中、同社が日本発の世界的企業へと成長するに至った秘訣はどこにあるのでしょうか。
(出典)エムスリー「2021年3月期決算発表資料」拡大画像表示
ここでは、ビジネスを支える構成要素に着目したビジネスモデルの「四つの箱」から、唯一無二と言われるエムスリーのコア事業の仕組みをひもといてみましょう。