
八尾麻理
大阪・関西万博で注目を集める「空飛ぶクルマ」。未来感あふれるビジュアルに目を奪われがちなその裏で、日本を代表する総合商社が、静かに、しかし確かな一手を打ち始めています。なぜ彼らは商用運航が未確定のこの事業に積極投資を行うのでしょうか?「ビジネスモデルの4つの箱」から商社の進化の方向性を探ります。

武田薬品工業、塩野義製薬──日本を代表する製薬大手が数年内にドル箱医薬品の特許切れを迎えます。特許切れに伴う急激な売上高の減少は、「パテントクリフ(特許の崖)」と呼ばれます。かつては年10億ドル超を売り上げるブロックバスター薬があれば安泰と言われたビジネスも、異業種からの参入が相次ぎ、競争は激化しています。各社はどうやってこの危機を乗り越えようとしているのでしょうか? AI時代における持続的成長へのヒントを探ります。

今、資本市場の荒波に揺れるセブン&アイ・ホールディングス。10月9日にカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール(以下、ACT)から7兆円規模の買収提案を受けた同社は、翌10日にイトーヨーカ堂などの小売り事業の分離と株式の一部売却を発表し、資本効率を上げる対抗策を打ち出しました。しかし、注目度の高い”稼ぎ頭”のコンビニ部門にも陰りが見え始めています。次なる稼ぎ方を模索するセブン、そして競合のファミリーマートの大胆な戦略転換を例に、国内市場での戦い方のヒントを探ります。

デパ地下に、入荷即日完売となる人気の焼き菓子専門店があります。その名は「GALETTE au BURRE」。一見、海外ブランドかと見まがうこの店を仕掛けるのは、洋菓子の老舗「モロゾフ」です。ブランドは、「商品とお客様の絆」とも言われる大切な看板ですが、それを”あえて隠す”という判断が、なぜ功を奏しているのでしょうか。現代ならではのブランドのつくり方を探ります。

4月からドライバーの労働時間が規制され、いわゆる「2024年問題」の渦中にある物流業界。「宅配便」シェアトップ2のヤマト運輸と佐川急便にとっても、他人事ではありません。しかし、本当に2社が見据えるのはその先の2030年。さらに深刻な労働人口の急減が待ち受けます。両社はどのように危機を打破するのでしょうか。業界サプライチェーンを読み解きながら、未曽有の障壁を乗り越える処方箋を考察します。

会員数日本一のフィットネスジム爆誕――。開業から約1年で業界勢力図を塗り替えたRIZAPの新業態「chocoZAP(チョコザップ)」。その特徴は、これまでの常識を覆すアイデアと実行スピードの速さ、まさに「ブリッツスケーリング(電撃的成長)」です。一方、RIZAPグループは24年3月期第2四半期まで4四半期連続で営業赤字を記録。急拡大に伴う先行投資は、もろ刃の剣ともなり得ます。同社はそのユニークなビジネスモデルに秘めた力を次のステップへ生かせるでしょうか?

3499ドル(約50万円)という価格で注目を集めたApple初のゴーグル型端末「Vision Pro」。発表から一カ月も経たないうちに、今度は『Financial Times』が同社の初年度台数の減産予想を報じました。しかし、株価は依然として高値圏にあり、時価総額は3兆円を超えています(2023年6月時点)。いったいなぜなのでしょうか? 新規事業で役立つ「MFTフレーム」を用いて解説します。

フリマアプリの先駆者「メルカリ」は、22年6月期の流通総額は業界トップの8900億円超に達しました。10周年を迎えた「正念場」となる2023年、同社は期待通りの成長を維持できるでしょうか。

創業123年のカゴメは、2025年までに“トマトの会社”を脱却し、“野菜の会社”になると表明しました。なぜ、自社の強みである“トマト”から脱却するのでしょうか。実は近年、企業ブランドの刷新が相次いでいます。その裏にある戦略を探ってみましょう。

ビール大手のキリンホールディングス(HD)とアサヒグループホールディングス。同業界の2社ですが、海外のM&Aはキリンがシェア低迷や政治リスクによる撤退、アサヒがコロナ禍も堅調と明暗が分かれています。2社の成否を分けた「グローバル化の盲点」とは。地政学リスクが高まる今こそ注目したい分析フレームワーク「CAGE」と共に解説します。

4月下旬、株式市場に衝撃が走りました。飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けた米配信大手ネットフリックスが、約10年ぶりとなる加入者数の減少を発表したのです。ネットフリックスといえば、自らが仕掛けたDVDレンタル事業を破壊し、ストリーミング配信で第二の創業を成し得たディスラプター(市場の破壊者)です。同社の成長を脅かす変化の兆しとは。

流通大手のセブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店「そごう・西武」の売却に動き出しました。教科書的には、コロナ禍で不振が続く百貨店事業から撤退し、成長余力のある事業へ経営資源を振り向ける、“選択と集中”という言葉が浮かびます。しかし物事はそう単純でしょうか。そこに死角はないのでしょうか。

コロナ禍3年目に突入した現在も深刻な業績不振に見舞われている航空業界。こうした危機的状況を幾度か経験しながらも、かつてはグローバル化の波に乗って需要を回復させていました。しかし今回は、コロナ後のビジネスのあり方を再考しなければならない大きな変化が訪れているといえます。これから航空会社は、どのような成長戦略を描いていけばいいのでしょうか。

街も気持ちも華やぐ年末年始に水を差したクリスマスケーキやおせち料理などの相次ぐ値上げ……。原因は、世界的な原油高や生産財の需要急増による原材料費の高騰です。こうした傾向の長期化は、消費財を扱う企業の業績悪化を招きかねません。企業は価格や商品政策において、どんな手立てを講じれば良いのでしょうか。

コロナ禍の巣ごもり需要拡大を追い風に、21年3月期には過去最高益を記録した任天堂。同社のビジネスをけん引しているのが、家庭用ゲーム機「Switch」です。「あつまれ どうぶつの森」など関連ソフトも好調な業績を支えています。こうした中、任天堂は10月8日、新型Switchを発売。技術的に目立った進展がないとされているこの新型機には、どんな勝算があるのでしょうか。

半導体メモリー大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)は、昨年見送った新規株式公開(IPO)を年内に実行する方向で調整中だ。米中分断による経済安全保障上の不安定さやパソコン関連の巣ごもり特需が一段落と見る向きもある中、同社の将来性についてどのような点に留意すればよいのか。外部環境分析の王道、PEST分析から考察する。

医療従事者専用サイト「m3.com」を運営するエムスリー。創業以来、右肩上がりに売り上げを伸ばし、2021年3月期には11期連続で純利益過去最高を更新した。同社はなぜ、たゆむことなく成長を維持できるのか。ビジネスモデルの「四つの箱」からその秘訣を探る。

6月下旬、約20年にわたり、富士フイルムホールディングス(HD)の経営を担った古森重隆氏が、会長兼最高経営責任者(CEO)の座を退きました。本業の写真フィルム事業消失の危機に直面しながらも、高機能材料、グラフィック・印刷、ヘルスケアなどの成長分野を開拓し、多様な事業からなるコングロマリット(複合企業)への変革を果たした富士フイルムHD。コロナ禍にもかかわらず、2021年3月期の当期純利益が1812億円と過去最高を記録したことが、その強さを物語っています。同社から学べる新規事業推進のヒントを「アンゾフのマトリクス」の観点から解説します。
