雇用調整助成金について、従業員に支払った休業手当を上回る金額の助成金を受け取る企業が存在していることを受け、国が助成金の運用を見直す。差額分が企業利益になるゆがみを解消するもので、“ある業種”が大きな影響を受ける。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
雇調金の一部が企業の利益になっている
雇用調整助成金(雇調金)受給額と休業手当支払い額の差額が企業利益になっている問題で、国がついにメスを入れることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。
雇調金は、企業が従業員に支払う休業手当を国が補助するもの。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い助成率や助成額を引き上げた特例措置が実施されており、支給決定額は累計4兆円超に膨らんでいる。その雇調金の一部は、実は企業に利益として流れている。
実際のケースとして、西武ホールディングス傘下の西武ハイヤーが従業員に支払った休業手当を上回る金額の雇調金を受給していることが4月に明らかになった(詳細は『西武グループで雇調金「不適切受給」疑惑!手口の全貌【スクープ完全版】』参照)。
ハイヤー事業とタクシー事業を行う西武ハイヤーは、コロナ禍の影響で利用客が減少。これを受けて、ハイヤーやタクシーを運転する乗務員が月に数日、休業するようになった。併せて会社側は雇調金を受給した。
同社のある乗務員の給与明細書を編集部で確認したところ、休業手当は1日当たり約7500円で基本給相当分。会社は従業員の1日当たり平均賃金単価である約1万2500円の雇調金を受給しており、実際に支給された休業手当との間に約5000円の差額が生じていた。差額分はそのまま企業の利益となった。
厚労省が運用見直し
西武ハイヤーしかり、現行のルールに従って受給していれば不正とはみなされない。
不正ではない以上、制度の隙をついて利益を得るテクニックになり得て、あまたの企業に差額の積み増しを許し続けることになる。
そこで厚生労働省は封じ手を繰り出すことにした。今月中か早ければ週内にも雇調金の運用を見直し、より厳格に、支払われた休業手当相当額を助成する仕組みにするのだ。
この運用見直しでは、特定の給与体系がターゲットになる。その結果、“ある業種”が大きな影響を受けることになる。